ミステリーの魅力 〜 騙しの技法 〜 その4
■ ゲームや漫画原作 ■
──お二人は謎解き小説以外のフィールド‥ゲームや漫画・ドラマの原作などの分野でも活躍されています。ドラマといえばつい先頃、安楽椅子探偵が放送されましたね。
綾「正直もう、くたびれてきました。あ、観てくださった方はありがとうございます。
あれは地に足のついたドラマだとできないことをやっています。メタな探偵を設定して思いっきり潔くね。
安楽椅子探偵では、映像で効果的なトリックというのを常に考えていて、1作目なんかは特によく出来たんじゃないかなあ、と。この辺り、小説では活字ならではのトリックを、メディアが変わればそのメディアならではのトリックを考えています。
『どんどん橋、落ちた』に収録された「意外な犯人」も、元はテレビの企画用に考えた原作で、ドラマでしかできないことを狙いました。なので、後で小説化した時は「何やってんのかな、自分」という気になりましたね(笑)。
『かまいたちの夜』は、小説にしませんかという話は?」
我「全部断りました。あれはゲームとしての面白さ、あくまでゲームの中でのミステリ的仕掛けを追求したものですから」
──『かまいたちの夜2』も出ましたね。
我「あれは続編ではないので、『1』のネタバレはせずにすんでいます」
──『かまいたちの夜3』はあるのでしょうか?
我「数年前「『2』はあるの?」と訊かれても「絶対ない」と答えてましたからね(笑)。
あの時はチュンソフトで別の企画を考えていて、でも一人だとどうにも先に進まない。その時「『かまいたちの夜2』はどうでしょう」という話が持ち上がったんですが、一人じゃ無理だ、そもそも同じ人間が同じスタイルで作っても面白くないだろうということで、田中啓文さんと牧野修さんに参加してもらって成立したんです。
ちなみに『かまいたちの夜3』はありませんが、いずれ何かあります。(おおっ!)詳しくはちょっと‥僕は別に云っちゃってもいいんですけど、チュンソフトという会社は発売が本当に確実になるまで徹底的に秘密にするんですよね、まあ良心的といいますか‥なので詳しくは云えません」
──ホラーの牧野修さん、SFの田中啓文さん、そしてミステリの我孫子さん、3人で連作もされましたよね。(『三人のゴーストハンター』なかなか面白かったです)
我「ゲームの製作で深く知り合うようになって。バランスがいいんですよね」
綾「漫才するのに?」(笑)
──ユニット名が面白いですよね(笑)。
我「三人の頭文字をとって「あ・た・ま」。互いにリスペクトしつつも自分の書くものはちゃんと書く、みたいな。お互いの位置関係が、離れ過ぎててもくっつき過ぎてても上手くいかないんですよね、絶妙な三角形になっていて。三人ともうまが合いますし」──綾辻さんはゲームは?
綾「ゲームはもうやりません」
──でも、十二国記は最近ゲームになりましたよね。
綾「えっ? ああ、あれはゲーム制作者側が勝手に作っているというか。僕はゲームの内容については全然知りません。アニメの方は、小野さんが脚本のチェックまではしているようですが。
十二国記の二次利用に関しては講談社に預けているようです。作者がかかわり出すとキリがないですからね。本業の方も足をとられずにすむし、いいんじゃないでしょうか」──去年出た綾辻読本(『ミステリ作家徹底解剖 綾辻行人』)には「人間じゃない」という漫画が掲載されていますが、これは綾辻さんが原作を書かれたんですよね。
綾「そうです。漫画の原作はこれが初めてで、今のところ唯一ですね」
──著作も漫画化されていますが、それにはタッチしていないんですか?
綾「児嶋都さんという漫画家を僕はすごく信頼しているし、才能のある方だと思っているし。『眼球綺譚』と『緋色の囁き』の二冊が出ていますが、どういうコンセプトでやるかについては事前に話を聞きました。
YAKATAも漫画になりましたが、あちらはほとんどが編集さんと漫画家さんのやり取りのみで。
ゲーム(の製作)はもうしないです。くたびれたというか、向いてないなと思いました」
──それは『YAKATA』がRPGだったからじゃないですか? RPGだと作家がゲーム全体を支配できないでしょう、戦闘とかに比重が置かれてしまって。サウンドノベルだったらいいんじゃないですか。ああ、『黒ノ十三』というのもありましたね。あれは監修だけ?
綾「あまり思い出したくない(笑)。あれは監修のみで、中身は書いていません。清涼院流水くんの名前もあるけど、実は彼の脚本は採用されていないんだよね」
──漫画の原作は?
綾「そうねー‥」
(この後「麻雀漫画の原作を」という話が出ていましたが、これは綾辻さん?それとも我孫子さん?分からなくなってしまった‥)
綾「ゲームに関しては、ゲームそのものをしなくなっちゃいましたね。『YAKATA』で、ゲームに対する情熱は全て使い果たされてしまって。昔の情熱はもうないです」
我「僕は「社会復帰」と称して、時折やってますよ」
綾「ソフトも買ってはあるんだけど、開封すらしていない。まあ、やってみりゃできるんだろうけど、時間がない、と云いつつ本も読んでいないし、反省することしきりですね」質問「自分がミステリーを読む時は、謎解きに挑戦する方ですか、それとも考えずに読みますか」
綾「以前V6の岡田くんと対談をした時に、彼は「騙されて悔しいのがたまらない、それで今度こそ!と挑むんだ」と云ってましたね。
僕の場合は、クイーンの国名シリーズあたりは「挑戦されたなら応えなきゃ」ってメモを取りながら読みました。国名シリーズ9作、『中途の家』まで含めて10作のうち、勝率は5割といったところでしたね」
(ここでちょっと解説(JDCさんありがとう)。クイーンの国名シリーズは10部作なのかと思っていたら、『ローマ〜』から『スペイン〜』までの9作は原題が『The ○○ Mystery』なのに対し、最後の『ニッポン樫鳥の謎』は『The Door Beween』(雑誌掲載時には国名がついていたらしいが)。読者への挑戦もありません。『スペイン岬の謎』で国名シリーズに終止符を打ち、ノンシリーズとして書いた長編ミステリが『中途の家』(『途中の家』)で、これには読者への挑戦が挿入されているとか)
──賞金50万円も出ないのに(笑)。
綾「でも、ある時期からは、むしろ分かるより騙されたいという気持ちが強くなって、わざと考えないようにして読むケースも増えてきました」
我「(僕の場合は)一瞬、考えますね」我「僕はクイーンは最初の頃あまり読んでいなくて。で「よし、1作目からやるぞ!」と『ローマ帽子(の謎)』を読み始めたんですが、解決編に問題編にもないデータが出てくるんですよね、なのにエラリイはそれを知っている。「これはずるい!」と。それが原体験だったもんで、どうもね‥」
綾「『ローマ帽子〜』はね、今読むとまた味わい深いよ。
最初に読んだのが『オランダ(靴の謎)』だったら、有栖川有栖になっていたかも」(笑)
我「有栖川有栖は二人はいらない」(笑)質問「ウルトラQって、何ですか」
綾「こんなかわいい質問が(笑)。僕は1960年生まれなんですけど、1966年から始まったテレビドラマで、ウルトラマンを作った円谷プロの製作です。でも、ウルトラマンのようなヒーローがいないんですね。怪獣や怪人が出てきて、それをやっつけたり、ひたすら逃げるだけだったり。DVDで発売されてます。今見直すとちゃちいんですけど、モノクロなのでちゃちさがカバーされてるかな。
第一次ホラーブームの頃、我孫子くんとオールナイトの映画館によく行きました。あの頃はレンタルがなかったから。5本立て、とかね。巽(昌章)さんも一緒で、小野さんも一度一緒に行ったかな」
我「僕はホラー映画はあんま好きじゃなかったんです。それが、ジョン・カーペンターの『遊星からの物体X』を見て変わりました」
綾「僕がまだ『遊星〜』を見てない時、我孫子くんがアレの形態模写をやってくれたのはすごかった」(笑)
我「あれを見て、スプラッタでも特撮を作ってる側の人がいるんだな、現場はさぞ楽しいんだろうな〜と。あそこまで行くと笑えるじゃないですか。13日の金曜日みたいな、あってもおかしくない設定だと陰惨で、わざわざ見たいと思わないんですが。最近はホラー映画のDVDでもメイキング映像が付いてますよね、あれが楽しくて」質問「咲谷由伊、名前の由来は」
綾「僕のホラー系統の作品には「咲谷由伊」という名前の人物が、同じ名前なんだけどいろんな役どころで出てくるんですが、深い意味はないです。オチもないです。由来は、他愛もないことなので、云いません」
質問「趣味は何ですか」
我「最近は囲碁ですね」
綾「すっかりハマってますね。『ヒカルの碁』以来」
我「この間竹本(健治)さんに9子局ですが初めて勝ちました。一子減らしてもらえますかときいたら「もう一回勝てたらね」と云われたのでやったら負けましたけど」
(詳しくはe-NOVELS「e-NOVELSのへの道は初段への道!」(あれっ?)第148回をどうぞ)
綾「竹本さんは、いつも囲碁のこと考えてるもんね」質問「赤いスニーカーの秘密を教えてください」
綾「秘密です」
我「風水とか?」
綾「いや、違う(笑)。ロジカルな答えがあるんですが、万人に知らしめるのもなんなので、死んだ後に公表します。まあ、どんな時でも赤いスニーカー、って決めちゃうと楽なんですよね。でもこの靴、廃番になるかもって聞いたので、困ってます。今10足持ってるんですが」
──京極さんの手甲みたいなものですか?
綾「いや、あれとは意味合いがちょっと違います」
我「同じ靴下を何足も持ってると、片方穴があいても無駄にならないのと同じ理由?」(でも、靴は左右が決まってますからねえ(笑))
綾「いや、そうじゃないけど。でも、毎日2ヶ月くらい履き続けてると、もう傷んじゃうんだよね」
我「聞き込みでもしてるんじゃないの」(笑)
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