子 ど も 向 け の 本 ?

ミステリーランド 
かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド」にまつわる話から派生した、「子ども向け」についてのお話。掲示板に書き込んでくださった皆さま、ありがとね。
 いろいろ考えたことを、つらつら書き綴ってみます。
 
◇ ミステリーランド既刊本の書評で「ミステリとしてはとても面白かったが、子ども向けの本としてはどうか」「子どもに楽しめるのだろうか」と書いてあるサイトがいくつもあって、とても気になったことが発端。
 ミステリーランドは小学校高学年〜中学生以上を対象としているシリーズですし、(自分が一般的かどうかはともかく)中学1年で新潮文庫のホームズを楽しんでいた自分としては、「問題ないんじゃない? 子どもの能力を過小評価してはいけないよ」と云いたくなりました。
 もっとも、「一口に子供といっても、読解力にはすごく差がありますね」という意見には同感。ぜひ、実際にミステリーランドを読んだ小学生・中学生の感想を聞いてみたいです。
ともっぺさんの娘さん(小6)は『虹果て村の秘密』があまりに面白くて夜を徹して読んでしまったとか。おお、将来が楽しみですな。)

◇ NHKの子ども番組(幼稚園・小学校低学年対象)で昔、「あんたがたどこさ」の歌詞の「煮てさ 焼いてさ 食ってさ」を「煮てさ 焼いてさ 食べてさ」と直して歌っていたのを聞いて、ものすごい違和感を覚えたことがあります。「食う」は正しい日本語でないから、子どものためを思って変えたとでも云うのでしょうか? それは余計なお世話なのでは?
 だから最近の「にほんごであそぼ」(同じくNHK)には拍手喝采。論語だって中原中也だってじゅげむだって、子どもはまるごと覚えてしまう能力を持っているのです。意味なんか大人になってから分かったっていいんだし。原典を大切にする姿勢、子どもの能力を信じた姿勢に、拍手。

◇ ミステリを子供用にリライトすることに関しては、自分の中で賛否両論。私自身、江戸川乱歩さんによるリライト作品や、子ども向けに書き直されたルパンを楽しんだ口なので、否定はしたくありません。でも、「大人になってから原典を読んで、あまりの違いに愕然とした」なんて話も耳にします。安易なリライトはネタバレと同義かも、と思ったりもします。かといって、入り口は必要ですしね。
 子ども向けにリライトされた作品を読んでミステリ好きになった人は、それだけで読んだ気にならずに、機会があったら原典の方もぜひぜひ読んでほしいな。
 ところで、入り口が必要という観点から云うと、はやみねかおるさんあたりの作家さん──子ども向けにオリジナルのミステリ作品を書いている──には今後も頑張ってもらいたいですね。太田忠司さんもご自身のHPで「自分はミステリの入り口となるような作品を書いていきたい」というようなことをおっしゃっていたので、期待。「ミステリーランド」も、目先の評判や売れ行きに左右されずに、版を重ねて長く存続させてほしいです。10年後に成果が分かる類いの企画だと思うので。

◇「読者と著者が同世代なのが大人の本、読者と著者が異世代なのが子供の本」
 児童文学を勉強した方に教わりました。異世代だからどんなに努力しても読者と同じ目線で書く事は出来ない、それをどこまで近づけるか、が大切なのだそうな。じゃあ、子供が同世代に向けて書いた本は?と天の邪鬼な質問をしたら「真の意味で子供に文学は(経験不足ゆえ)書けない」という答えが。
 なるほど〜と納得しつつも、「世代」って云い方だと割り切れない部分もありますね。自分がとっくに中年の域に差しかかっているにもかかわらず、いまだに子どもっぽい部分が多くて子どもと話していてもジェネレーションギャップを感じない、そんな質だからでしょうか。
 大人もかつては例外なく子どもだったのだから、子どもの気持ちは理解できて当然。そう思うのって私だけ?

◇ 話は思いっきりずれますが、著者と読者(自分)の世代が全然違っても、例えば乙一さんや米澤穂信さんの作品は何の違和感も感じずに読めるし、大好きです。でも、日本語が崩壊している作品は、いや。どれとは云いませんが、内容云々以前の段階で、読む気が失せます。時間の無駄って思っちゃう。

◇「子供の本に暗喩を使ってはいけない」
 話を元に戻しましょう、これまた児童文学を勉強した方に教わりました。子供は文章の内容をそのまま受け止めてしまい暗喩に気づかない場合があるので、だそうです。
 テレビのインタビューで宮崎駿さんが「作品を作っている自分が云うのもなんだが、実は4才くらいまでの子どもにはテレビもアニメも見てほしくない。小さい子どもは現実・架空の区別なく丸ごと受け止めてしまうから」というようなことをおっしゃっていたのを思い出しました。

◇「日本で童話というと、子ども向けだからと簡単にしたり残酷な部分をなくしたりするけれど、外国だと残酷なところもあるし、死について書かれていたりもして、大人も普通に楽しめる」
 これも、やはり児童文学を学んだ方のお話。日本は少し過保護すぎるのかな。

◇「良い本」って、なんだろう?
 伝記を読むとほめられるとか、推薦図書の帯が付くと必ず売れるとか、ゲーム関係の本と誤解され敬遠されたとか、なんだかなあって思うことがたくさん。でも伝記や推薦図書それ自体に罪はありません。読んで面白い本もたくさんあることでしょう。
 結局は「自分が読んで面白いと思った本が、良い本」なんですよね。極論を云っちゃえば、対象年齢によるジャンル分けって意味がないと思います。ひとくちに子どもと云っても、読解力や本に対する興味にはうんと幅があるからね。
 判断するのは、本人です。

◇ ならば「子ども向け」というジャンルは必要無いかというと、それもまた無謀なことで。前のコラムに書いたように、漢字の使い方に配慮したり性描写・残虐描写を規制したり、こうしたことは必要だと思います。
 それから、世間一般から見れば、我々(本好き)ってものすごーく片寄った集団でしょう(笑)。普段ろくに読まない人たちが本を手に取る時には、何らかの指針やガイドはやっぱり必要でしょうから。

◇ 最後に、我が家の状況を。
 次男くん(6才)は、まだ字が読めないので、もっぱら読み聞かせ。前はすぐ飽きちゃってたけど、最近は一生懸命聞くようになりました。
 長女さん(小5)は、私と違って本を読むスピードが早いです。理解度は保証しかねますが(笑)。
 学校の伝記シリーズ(漫画版ですけど)を読破。漫画と侮ることなかれ、意外なことを詳しく知ってて、感心させられてます。最近凝っているのは「妖怪レストランシリーズ」。図書館で借りたり買ったりで何冊かは読んだのですが、全巻家に揃えたい、サンタさんに頼むと云ってます。ううむ困ったな、28冊もあるのよ(笑)。
 長男くん(小6)は、ゲームの攻略本以外ほとんど読まない人だったのが、今年あたりからめきめき‥といっても、文学じゃなくて『江ノ電・懐かしの電車名鑑』とか『失われた日本の鉄道100選』とか(笑)。レトロな車両が好きなんですよね。それでも、暇さえあれば寝っ転がって読み(写真だけじゃなく文章もちゃんと読んでるみたい)、主人の実家へ泊まりにいく時も必ずこれらの本を携帯し‥という姿を見ると、こんな読書もありなんじゃないかな、と思います。私が薦めたミステリには乗って来てくれなかったけど、森博嗣さんの『ミニチュア庭園鉄道』はハマって、何度も何度も読み返してますね。ふっふっふ、『工事中よ、永遠に』が本になったら読ませちゃろ(笑)。

(2003/11/16)

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