mihoroの読書記録(2004年)

2004年に読んだ本の中で面白かったものをあげてみました(ミステリ・ホラーが中心‥とも云えなくなってきたな)。あらすじは敢えて書いてありません。本の裏表紙などに書かれているものを参考にして下さい。
ネタバレはしてませんのでご安心を。書名の五十音順に並んでいます。


■『アイ・アム』菅浩江(祥伝社文庫)注文

 介護用ロボット「ミキ」がたどる自分探しの軌跡。ミキの正体そのものより、ミキの作られた理由に「ほう」と思った。ミキが出会う患者たちのエピソードはなかなかリアルだけど、全体的にあっさり味というか、もっと切実さが欲しかったな。ラストの一文が好き。(3月)

■『アルファベット・パズラーズ』大山誠一郎(東京創元社)注文

 物語のすべてがトリックに捧げられていると云ってもいいくらい、これは潔い小説だなあ。守秘義務はどうなってるのとか思わないでもないんだけど、ここまでやってくれたらもう「お見事」の一言。名探偵一人に後は雑魚、じゃないところも嬉しい(おバカなワトソンは苦手なの)。(11月)

■『異形家の食卓』田中啓文(集英社文庫)注文

 これだけグロい話がよくもまあバリエーション豊かに続くこと、きっと田中さんの想像力の泉は尽きることがないんだろうな、と感心。「にこやかな男」のラスト、綾辻さんの「特別料理」とちょっと読後感が似ている「新鮮なニグ〜」、「怪獣ジウス」の切なさが特に心に残った。(1月)

■『ifの迷宮』柄刀一(光文社文庫)注文

 自分もプチ障害者の母なので、百合絵と斗馬くんに関する段を読んでいる時は、終始後頭部をフライパンで、ぐわーん、ぐわーん、と殴られているかのような衝撃度。彼女の絶望も希望もむちゃむちゃリアルに分かるだけに辛かったけど、いいもの読んだ〜と心から思えた。
 ミステリ部分もなかなかに魅力的。いったいこれらの途方もない謎はどう解かれるんだろうと読み進めていくと、実にきれいに着地してくれて、満足。ラストもいい。なるほどこの人物はこういう役回りだったのか。(3月)

■『失はれる物語』乙一(角川書店)注文

 装幀がすばらしい。再録の5篇(「マリアの指」以外)については、読んでいる時、心の中がところどころ涙でにじんで、まさしく表紙の絵そのものの状態に。書き下ろしの「マリアの指」は、ミステリ的にすごく計算して書かれていると感じた。特にプロローグとエピローグの繋がりが巧いな。(3月)

■『黄金蝶ひとり』太田忠司(講談社)注文

 私が一番感心したのは、メタな仕掛け。これから読む人は「本の最初から順番に読んでね」。この本がミステリを好きになるきっかけになってくれれば、という作者の思いは充分に伝わってきた。暗号の意味はネットで調べずポオを読むことにしようっと(^^)。(12月)

■『贈る物語Wonder』瀬名秀明・編(光文社)注文

 読書欲をかき立てられる瀬名さんのお薦め文がとてもいい。私の好みは「鏡地獄」(小説ももちろんのこと、片山健さんの挿画がすばらしい!)、「托卵」(平山夢明さんの文章がいい)、「ひとつの装置」(分かりやすくシンプル、だからこそ星新一さんは凄い!発想も凄い!)。(7月)

■『おなかほっぺおしりトメ』伊藤比呂美(PHP研究所)注文

 今度はカリフォルニアでの子育てのお話。名著『良いおっぱい悪いおっぱい』のカノコちゃんももう高校生、時の経つのは早いなあ。T成長促進の呪文Uううむ、日頃怒鳴り散らしている母としては耳が痛いぞ。そしてこの本を読んだ人のほとんどが思うであろう‥「西さんは今、どうしているんだろう?」。(11月)

■『怪笑小説』東野圭吾(集英社文庫)注文

 東野さんが真面目にお笑いに取り組んだ(そういう感じがするのよ)短編集。笑って笑って、ふと気が付くと自分が笑われているような身につまされる感じが何ともはや。あとがきと真保裕一さんの解説はお徳感大。(12月)

■『玩具修理者』小林泰三(角川ホラー文庫)注文

 表題作、これ大好き。ラストの趣向はあってもなくてもいいんじゃないかって思えるほど、途中の描写が素晴しい。「酔歩する男」は、SFっぽいというか理系っぽいというか‥でも”眩暈”感は十二分に味わえた。(1月)

■『極短小説』(新潮文庫)注文

 ショートショートよりさらに短い「Fifty-Five Fiction」五十五語の小説集(公募)。ちょっと1編が短すぎて物足りなかったかな。私のお気に入りは「寝物語」「感謝の気持ち」「新しいメード」。和田誠さんの絵は素晴しい!(4月)

■『薬指の標本』小川洋子(新潮文庫)注文

 題名と装幀に惹かれて購入。生暖かいような、不思議な読後感。表題作ではサイダーにまつわる「あの情景」の美しさが最も印象に残った。「六角形の小部屋」も素敵、今の私にとっては切実なお話。(8月)

■『クロスファイア(上・下)』宮部みゆき(光文社文庫)注文(上)注文(下)

 強い立場にいるがゆえの孤独、背負い続けなければならない過去の過ち。法律の裁きをかいくぐってのうのうと生きる悪者を断ずるのは正義か、それともただの人殺しか。──いろんなことを考えさせられた。主人公側と刑事側、双方からとてもバランス良く物語が描かれていて長さを感じさせないし、淳子の探していたある人物の正体も意外だったし。ひとときでも淳子の笑顔が見られたのは嬉しかった。
 吐き気がするほど救いようのない人物が何人も出てきて、でもそんな彼らに対して主人公が「本当は自分と彼らは近いところにいるのではないか」と疑問を感じるあたりも心に残った。(11月)

■『工作少年の日々』森博嗣(集英社)注文

 森さんのひとりツッコミが可笑しいったら。内容的には以前のHP日記や浮遊研究室の延長で、さほど目新しさは感じなかったけど。「飛行機の証明」の章が、まるまる共感はできないまでも一番心に残った。(7月)

■『さよなら妖精』米澤穂信(東京創元社)注文

 その本を読む前と読んだ後では見える風景が違っている──例えば『鉄塔 武蔵野線』読了後は「鉄塔が見える人」になった私(笑)だが、この『さよなら妖精』も自分にとってはそういう本だった。「マーヤ」は小説の中の登場人物に過ぎないのに、私にとっては今までに見たニュースやドキュメンタリーの映像よりも、リアルな存在だったのだ。泣けた。(6月)

■『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信(東京創元社)注文

 題名の“いちごタルト”、ラノベ風の表紙、帯の“コミカル探偵物語”、たしかに出だしはそういう雰囲気なのだが、ラストの一編「狐狼の心」の緊迫感と切実さ。米澤節は健在なり。ミステリとしても、なるほど!な伏線が決まってて面白かったな。(12月)

■『スカイ・クロラ』森博嗣(中央公論新社)注文

 この本を読んでいると、部屋の中に居ながらにして空が飛べる。なんという浮遊感、この描写力はすごいな。研ぎ澄まされた文章と内容は、太陽がすぐ側にあってギラギラと輝いているのに空気は凍るほど冷たい、空の上と同じ体感温度。おそらく私がこれから生きていく中で、何度か読み返す本となるだろう。(8月)

■『STAR EGG 星の玉子さま』森博嗣(文藝春秋)注文

 森さんの絵、可愛くて大好き。タッチも色遣いも素晴しい!「四通りの読み方」という発想も素晴しい! 久々に感想メールを著者宛に送ろうかな。(11月)

■『スペース』加納朋子(東京創元社)注文

 うわーうわー、これは凄い! 特に、異なる視点から語られた「バック・スペース」が秀逸。え、4作目の予定もあるって、これ以上どんな伏線が?(7月)

■『象と耳鳴り』恩田陸(祥伝社文庫)注文

 謎の解ける爽快感より心がザワつく恐怖感が勝る、この雰囲気好きだなあ。「給水塔」は特に怖かった。どんな内容なんだろうと期待を持たせる題名の付け方も秀逸。(1月)

■『超・殺人事件 推理作家の苦悩』東野圭吾(新潮文庫)注文

「東野さんって、転んでもただでは起きない人なんだな」と思った(別に転んではいないかもしれないが)。作家にまつわるマイナス要素をも作品に仕上げて飯の種にしちゃうんだから大したもの。「超犯人当て〜」の仕掛けにはまんまと騙された。読者にとっても「あいたたた」なのは「超読書機械〜」だろうな。解説がなかったのは残念。(5月)

■『鉄塔 武蔵野線』銀林みのる(新潮文庫)注文

 この本を読むと、あなたも「鉄塔が見える人」になれる(笑)。いやあ、何であんなに大きなものが今まで視界に入らなかったんだろう。文章は決して上手いと思わない(鉄塔の説明も写真がなかったら理解できなかっただろうし)けど、男の子の行動、心理の描き方はどんぴしゃ。第9章も「おおいなるオマケ」(『チ・ン・ピ・ラ』(<大沢たかおじゃなくて柴田恭平主演の方ね)の監督・川島透さんがこの映画のラストをこう称していた)って感じで、私は大好き。映画版も観てみたいな。(3月)

■『毒笑小説』東野圭吾(集英社文庫)注文

『怪笑小説』に比べるとちょっとパワーに欠けるかな、と思って順に読んでいたら、「女流作家」のミステリ風味に「おっ」となり、「殺意取扱説明書」「本格推理関連グッズ鑑定ショー」の発想に感心し、笑いのつもりが切ない話になってしまった「つぐない」にじ〜んとし。ちなみに一番笑ったのは司会者の名前(おい!)。巻末の京極vs.東野対談も読みごたえあり。(12月)

■『ななつのこ』加納朋子(創元推理文庫)注文

『スペース』を読む前段階として、再読。ネタは(おぼろげながらですが)覚えていたので、その分今回は物語のきめ細かな情感に心を打たれた。本はよほどのことがない限り、ゆめゆめ手放すこと勿れ。「一枚の写真」「白いタンポポ」が特に心に残った。(7月)

■『斜め屋敷の犯罪』島田荘司(講談社文庫)注文

 トリックはたしかに大掛かりで、動機もなるほどと思わされたけれど、犯人がちっとも意外じゃなかったなあ‥。(8月)

■『生首に聞いてみろ』法月綸太郎(角川書店)注文

 無駄なパーツがひとつもない、実に端正なミステリ。初出が雑誌連載だったので、各回ごとのサスペンスフルな盛り上げも意識して書いた、というようなことを以前のインタビューでおっしゃっていたと思うのだが、まさしくその通り。短いインターバルで小波が押し寄せるように物語が動くので、飽きさせない。お見事。終盤のカタルシスという点では地味目かもしれないが。(12月)

■『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午(文藝春秋)注文

 未来に向かって生きる希望がわいてくる、そんな小説。サプライズそのものより、最終章「約束」が一番心に残った。ミステリ的には、じっくり再読して作者の技の凄さや細部の苦心の跡を味わってから語りたいな、これは。
 ただ、題名はちょっと疑問。「葉桜」は初夏の季語なんだけど。(2月)

■『パズルゲーム☆はいすくーる(10)』野間美由紀(白泉社文庫)注文

 文庫は1巻から順に買って読んでいるのだが、今回からは文庫が初読み(雑誌掲載時にもコミックスでも未読)なのでここにも感想を。すんごい質の高いミステリで改めてびっくり。最後まで気の抜けない話がめじろ押しだ。初出は綾辻さんたちの安楽椅子探偵より6年も前だもんなあ。(10月)

■『鳩笛草』宮部みゆき(光文社文庫)注文

 いわゆる超能力を持って生まれてきてしまった、ふつうの人々の物語。うわあ、『デッド・ゾーン』に『ファイアスターター』だあ!(両方ともキングの傑作、大好き)望む望まざるに関わらず特殊な力を持って生まれついてしまったら、ただ隠すだけでなくそれを活かして生きたいとは思わないのか。自分に置き換えて思わず考えてしまった。(11月)

■『花の下にて春死なむ』北森鴻(講談社文庫)注文

 うわー、今まで読まずにいた自分を小一時間問いつめたいほどの、良質な連作ミステリだった。色のある文章に酔い、意外なプロットに舌を巻き。続編も早く文庫にならないかな。(12月)

■『万事OK』伊藤比呂美(新潮社)注文

 伊藤さんには一日も早く本当のお祖母さんになっていただきたい。40代でこれだけ含蓄のある的確なコメントができるんだから、さらに年を重ねりゃ鬼に金棒。楽しみだ。(11月)

■『ブルータスの心臓』東野圭吾(光文社文庫)注文

 再読して、最近の自分の好みはこういうタイプのミステリから離れつつあるなあと思ったものの、それでもやはりプロットの妙に唸らされた。ダークさが好み。(1月)

■『文学賞メッタ斬り!』大森望・豊崎由美(PARCO出版)注文

文学賞は、作家のためにある(読者のためにあるのではない)」ってことが、よーく分かった(笑)。商売抜きには語れない部分があることも。ROUND4の選考委員萌え(?)話には大爆笑。とにかく本に勢いがある。めちゃ貶されている本ですら読みたくなってしまう、このパワーはなんなんだ(笑)。(3月)

■『ペルシャ猫の謎』有栖川有栖(講談社文庫)注文

 軽い気分で読めるのもいいし、“異色作”というのも結構好み。「わらう月」が良かったな。「赤い帽子」は内容の割には長過ぎると思うけど、題名と幕切れの唐突さがいい。(12月)

■『螢』麻耶雄嵩(幻冬舎)注文

「こんなん一回読んだだけじゃ分からんよ!」って一瞬思った(落ち着いて考えたらちゃんと分かったが)。うわあ、凝ったこと考えるなあ。冒頭から、のどに刺さった魚の小骨のように引っ掛かり通しのことがいくつかあったのが、思いもしない方向から解決。そうかこういう手があったか、やられた。ラストの趣向はすんごい好き。(12月)

■『本棚探偵の回想』喜国雅彦(双葉社)注文

 ネタそのもののインパクトは『本棚探偵の冒険』の方が大きかったが、どっこい今回もたくさん笑った。「秋は読書」いいねえ。「どっきりドキドキ」ものすごい凝った仕掛けで日テレもびっくり(笑)。「本棚探偵の敗北」自分も経験あり(角田喜久雄じゃないけれど)。いつの日か第3弾『本棚探偵の帰還』を!(11月)

■『毎日かあさん カニ母編』西原理恵子(毎日新聞社)注文

 サイバラさんの家庭漫画、これはいいっ。だけど表紙は厚いしページも少ない。うう、もっとたくさん読みたいよお。(3月)

■『まだまだ2分間ミステリ』D・J・ソボル(ハヤカワ文庫HM)注文

 推理クイズ第3弾。私の戦績、61問中48問正解。今回は簡単でちょっと物足りなかったなあ(偉そうに(笑))。(2月)

■『魔法飛行』加納朋子(創元推理文庫)注文

 やはり、最後のお話の疾走感が好き。「おお、こんなところに伏線が!」。(7月)

■『もっと2分間ミステリ』D・J・ソボル(ハヤカワ文庫)注文

 62問中正解は37問、「名探偵への道のりは険しい」と診断されてしまった、ああ‥。(1月)

41冊

list
home map
SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ 掲示板 ブログ