mihoroの読書記録(2005年)

2005年に読んだ本の中で面白かったものをあげてみました(ミステリ・ホラーが中心‥とも云えなくなってきたな)。あらすじは敢えて書いてありません。本の裏表紙などに書かれているものを参考にして下さい。
ネタバレはしてませんのでご安心を。書名の五十音順に並んでいます。

12/31 『フォア・フォーズの素数』


■『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎(東京創元社ミステリ・フロンティア)注文

 えーん、読んでて辛くて仕方がなかったよお。坂道を転がるようにどんどん悪い方へと転がっていく物語をどうすることもできないもどかしさ。でも仕掛けにはびっくりさせられたし、何より「ための仕掛け」じゃなくて物語と密接に結びついた「必然性のある仕掛け」であることには、素直に感心。著者にしか書けないオリジナリティーあふれる作品であることも、大いに評価したい。
 あとはもう自分との相性の問題なんだろうなあ。軽妙でカッコいいんだけど、軽々しくて癪にさわる、宝石と虫の死骸が一緒くたにポケットに突っ込んである、そんな印象なんだよね、伊坂ワールドって。(11月)

■『いつか、ふたりは二匹』西澤保彦(講談社ミステリーランド)注文

「半ドン」とか「えんま帳」とかって、イマドキの子どもは意味分かるのかなあという疑問はさておき(笑)、とても陰惨な事件なのだが、こうしたことも実際に起こりうる物騒な現実社会にやり切れなさを感じた。ミステリ部分の展開はある程度予想できたが、ラストシーンは作者の込められた思いが伝わってくるようで、とても良かったなあ。(4月)

■『イニシエーション・ラブ』乾くるみ(原書房)注文

 読み終わった時は「こいつ、(微妙にネタバレなので伏せ字に→)誰やねん!」と。あちこち読み返してようやくカラクリに気付いた。謎は何もないんだけどミステリ‥なんだろうなあ。物語全体は恋愛ドラマの再々放送を見ているような感じ。でも、自分の若い頃を芋づる式に思い出したりしながら(笑)、結構楽しめた。(1月)

■『犬はどこだ』米澤穂信(東京創元社ミステリフロンティア)注文

 うわあ、めちゃめちゃハードボイルド。後半どんどん物語が加速していくのがすごかった。(11月)

■『「ABC」殺人事件』(講談社文庫)注文

 有栖川・恩田・加納・貫井・法月という豪華ラインナップは読みごたえあり。どの作品を好きかは、ミステリのどういう部分も面白いと思うかで個々に意見が分かれるんじゃないかな。私のイチオシは恩田陸さんの「あなたと夜と音楽と」。怖がらせ方がもろツボに入ってしまって、うわーこれは好きだなあ。(7月)

■『エミリー』嶽本野ばら(集英社文庫)注文

 表題作を夕方台所で読んでいたら、すっかり打ちのめされてしまって、その晩のおかずがめっきり質素になってしまったという(笑)。でも、どん底にあっても心の拠り所を見つけて必死に生き抜いていく、諦めでもなく憎しみでもない、その心の前向きな強靱さに感動。とぼけた「コルセット」も好きだなあ。綿矢りささんの解説も、適切ですごくいい。(6月)

■『おぞましい二人』エドワード・ゴーリー(河出書房新社)注文

 ひたすら淡々と綴られる物語。絵だけ見ていると、ぽわ〜っとした感じ(笑)なんだけど、現実に起こった事件を題材にしているという点で、他のゴーリー本と一線を画する読後感あり。(3月)

■『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』江國香織(集英社文庫)注文

 うわあ、参ったなあ、物語と自分の周波数が妙に合ってしまって。今の自分はまさに「安全でも適切でもない」不安定な状態なんだなあと、認識(って別に不倫とかしているわけじゃありませんが(笑))。(6月)

■『かたみ歌』朱川湊人(新潮社)注文

「ま、いつものノスタルジックなホラーファンタジー路線なんだろうな」「最近鬼のように各小説誌に書いていらっしゃるから、そう毎回毎回ハイレベルを期待したら悪いよな」と、軽〜い気持ちで読み始めたら、とんでもなかった。登場する世相や音楽を(リアルタイムではないにせよ)ぎりぎり知っている世代なので、物語に入り込みやすかったせいもあるだろうが、そうした小道具がなくても(つまり当時を知らない若い人でも)充分に楽しめると思う。淀みない美しい日本語にも惚れ惚れ。
 舞台は各話共通しているのだが、それ以外にも人物、小道具が微妙にリンクしているのが上手いなあ。泣けたのが「夏の落し文」「栞の恋」。前者はホラーとしても出色。「朱鷺色の兆」は、語り手が何故あんな長話を始めたかを深読みすると、ゾッとした。(10月)

■『神様』川上弘美(中公文庫)注文

 冒頭の一文でもうすっかりとりこに。挿絵をつけるとしたら絶対わかつきめぐみさんだ!(5月)

■『神様ゲーム』麻耶雄嵩(講談社ミステリーランド)注文

 麻耶さんがこんなに“書ける”方だったとは、正直びっくり。今まで読んだミステリーランド(小野・殊能・太田・竹本・西澤・倉知・麻耶)の中で、描かれている少年の心理や言動が現実の彼らと最も近いと感じたのは、殊能作品と本作が双璧。内容のダークさがとかく話題になっていて、たしかにダークだし、このラストは子どもに分かるかいな(実は私も分からなくて、ネットであちこちの感想を読みあさってようやく理解(笑))と思ったけど、子どもの視点を見事に再現した語り口は、もっと評価されてしかるべきでは。
 子ども向けの物語でも著者のカラーを突き通した点、本格ミステリのテクニックを惜し気もなく注ぎ込んだ点も私は買うぞ。原マスミさんの挿絵もベストマッチ。(10月)

■『硝子のハンマー』貴志祐介(角川書店)注文

 初めて読む作家さんなのだが、第II部の筆致が本領発揮という印象。ハウダニットは魅力的だった。ロボットに関する記述が特に心に残ったな。(1月)

■『gift』古川日出男(集英社)注文

 掌篇集だが、まあなんて活字が大きい(笑)、でも不思議な元気をもらった。。パワフルだけど粗野ではなくて、そしてポジティブ。一番好きだったのは「鳥男の恐怖」かな。(9月)

■『cat's-paw』野間美由紀(秋田書店)注文

 微細な超能力を持った面々が集って、という設定を聞いてコンゲームのような展開を予想していたので、ちと肩透かし。でも、人の心の機微は上手に描かれていると思った。(11月)

■『Q&A』恩田陸(幻冬舎)注文

 ひとつの章がひとつの短篇のよう。「郊外型ショッピングセンターで多数の死傷者が出たが、いまだ原因特定できず」という設定から想像しうる様々な物語の羅列は、想像力の勝利! 特に序盤、事故当時の描写は迫力満点だ。集団心理の怖さや人間の弱さ、熱しやすく冷めやすい日本人の特徴なんかも盛り込まれ、「うんうん、こういう展開、ありそうだよなあ」と思わせられた(びっくり、な部分もあったけど)。
 各人の証言を集めることによって次第に事故の詳細が明らかになる『Q&A 謎解きバージョン』も読んでみたいな、と云ったら欲張りかなあ。(2月)

■『旧宮殿にて』三雲岳斗(光文社)注文

「二つの鍵」以外は比較的易しいトリックで、でも人物も情景もとても活き活き描かれているので、読んでいる間とても楽しかった。カタカナの名前が苦手な人でも、この小説は大丈夫よ。(11月)

■『きょうはなんのひ?』瀬田貞二 作・林明子 絵(福音館書店)注文

 北村薫さんの『ミステリ十二か月』で最初に取り上げられていた絵本。こういうお手紙ゲーム、うちの子たちも子供どうしで良くやってたなあ。すべての手紙を通しての仕掛け、含みあるラストの一文。おお、ミステリだあ(^^)。(2月)

■『空想の繪本』安野光雅(講談社)注文

 安野さんの絵本は、トリッキーなものも自然を描いたものも、みんな大好き。この本は、過去の作品についての解題エッセイがたいそう興味深かった。(3月)

■『クドリャフカの順番「十文字」事件』米澤穂信(角川書店)注文

 楽しい!面白い!伏線いっぱい!動機も納得!これ以上何を望む?みんなも読んで〜。(9月)

■『剣と薔薇の夏』戸松淳矩(東京創元社)注文

 ブラボー!読み終わるのに一ケ月もかかったが(<かかり過ぎ)、普段カタカナ名前も時代物も敬遠しがちの私がめっちゃ楽しめたんだからすごいよこれは。文章にぞっこん惚れたね。時代小説としてのあまりの面白さに連続殺人はかすみがち(笑)だが、どっこい終盤のある人物の手紙は一気読み、しびれた〜。事件と時代が密接に関わっているのもマル。(5月)

■『ゴーレムの檻』柄刀一(カッパ・ノベルス)注文

 難解‥ではないのだが、スケールが大き過ぎて私の手には余る、といった印象。でも、どう考えても不可能だろうと思える魅力的な謎を打ち砕く本格魂は、美しいと思った。「太陽殿のイシス」がお気に入り。ゴーレムが脱走した謎だけでなく、その後の展開にも整合性のあるところがいいな。(11月)

■『工学部・水柿助教授の逡巡』森博嗣(幻冬舎)注文

 面白いっ。ふざけているけど面白い〜。ミステリヲタや出版業界への皮肉(客観的事実を述べているだけなんだけど)にもついつい笑ってしまう。ラストに至っては、ズルいくらいに晴れやかな読後感。やっぱ森さんは「逆上がりが苦もなくできる人」なんだなー。(3月)

■『工学部・水柿助教授の日常』森博嗣(幻冬舎文庫)注文

 限りなくエッセイ(もしくは日記)に近い小説。でも読んでいる間中、げらげら笑って実に癒された。人の心をリラックスさせる文章が書けるのは立派な才能だ。日常の謎系の不思議な出来事とその解答も面白かったな。(2月)

■『紅楼夢の殺人』芦辺拓(文藝春秋)注文

 中国という慣れない舞台に人名、登場人物の多さに最初こそビビったが、あっという間に読者を物語に引きこむ、巧みで活き活きとした語り口はさすが。次々と人が殺されるのに、陰惨さがかけらもない(笑)。それを現実離れした絵空事と鼻白むか、この虚構性こそミステリの醍醐味と愉しむかは読者次第。私はもちろん後者だ。トリックの弄された理由が秀逸。(2月)

■『昆虫探偵 シロコパκ氏の華麗なる推理』鳥飼否宇(世界文化社)注文

 聞いたこともない昆虫の名前や、「シロコパ」「カンポノタス」など舌を噛みそうな個々の名前(学名が由来なのは分かるのだが)に最初は戸惑ったが、それさえ慣れてしまえば、笑えて、本格としても充分に楽しめて、いやあ面白かった。それぞれの結末もきちんと伏線が描かれていて、私は納得(唯一「そりゃ分かんねえよ!」と思ったムツトゲイセキグモの登場の際には、ちゃんと本文中にも「怒号。罵声。喧々囂々。」って書かれてあったしね)。ラストの一編の傍点部分には「うわ、あれがアリならこれもアリか!」と、のけぞった。これぜひ、文庫化してほしいなあ(光文社で5月に文庫化されました、ばんざい)。(1月)

■『さいえんす?』東野圭吾(角川文庫)注文

 著者は不満をただ述べるだけでなく、自分なりの解決策まできちんと提示してくれるので、とても納得できる。そうか作家の世界は相撲部屋システムだったのか。でもこの『さいえんす?』って題名はいかがなものかと。たしかに理系っぽい話題は多いけど、これは「私は文系の人間ですから」と公言してはばからない人にこそ読んでほしい本なので、『人気作家・東野圭吾の頭の中』とか(そんなヘボな題名じゃ余計手に取ってもらえないと思うが)、とにかく文系の人が逃げないような題名の方が良かったな。(12月)

■『刺繍する少女』小川洋子(角川文庫)注文

「美しくも恐ろしい十の「残酷物語」」と裏表紙にあったので、どんなホラーかとわくわく読み始めたが、私にとっては怖いというよりは非常に懐かしい香りのする物語だった。まるで自分が体験してきたことのような懐かしさ。(4月)

■『死体の冷めないうちに』芦辺拓(双葉文庫)注文

 どれもトリックがとても面白かった。警察のダメダメぶりも、案外シャレにならないかも。(7月)

■『実験小説ぬ』浅暮三文(光文社文庫)注文

 ぬるくしたカップラーメンはどう使うのだろう、という疑問はさておき(笑)、わっはっは、よくこんなこと考えつくなあ。奇想を小説たらしめるその腕前に感服。(12月)

■『失踪日記』吾妻ひでお(イースト・プレス)注文

 最近「失踪したいな〜」と思うこと多いんで(おいおい)つい、シンパシーを感じて購入。なにがすごいって、どん底の体験をきっちり笑えるネタにして描いていること。ついついネット上で愚痴やら怒りやらをまんま書き散らしちゃう我が身を反省、ネタに昇華させて冷静に描くプロの姿勢は見習うべし。絵も相変わらず上手くて可愛いし、日本漫画家協会賞大賞受賞も納得の1冊。続編もあるそうなので楽しみだ。とはいえ奥さんはもっと偉いよ。ちなみにこの本もカバー裏は要チェック。(5月)

■『しっぽの国のビビビ』加藤タカ(文渓堂)注文

 この人の絵は大好きなんだけど、色遣いは昔の方がいいかなあ。デジタルになってからはピンク系がカラフルすぎる感じ。その点今回は夜のお話なので、色合いが落ち着いていて良かった。お話もカワイイし、文字の配列もただの横書きじゃなく弧を描いたりしてる部分がリズミカル。(6月)

■『姉妹 一Two Sisters一』吉村達也(角川ホラー文庫)注文

「映画の謎は、全てこの小説で明らかになる!」とあったので、DVDを観た後に読んでみた。たしかに、細かい設定は分かりやすかったかな。韓国の童話『薔花紅蓮伝』については、特に知らなくても大丈夫だと思ったが。でも「DVD鑑賞が一般化し、瞬時に希望の場面に戻れるようになったから、映画であっても伏線を伏線として意識的に注目させるような演出はしない」というのは、映画の観客に対していかがなものかと。ビデオカメラも髪留めも一回観ただけじゃ分からないって。(8月)

■「始末人シリーズ(全五巻)」明智抄(朝日ソノラマコミックス文庫)注文

(『明朗健全始末人』『鳥類悲願始末人』『白花撩乱始末人』『暗中捜索始末人』『勧善掌悪始末人』)
 耽美とお笑い、狂気と悲哀、すべてを網羅した怪作。小鳥さんが好きっ。(9月)

■『下妻物語』嶽本野ばら(小学館文庫)注文

 己の足でしっかりと立っている少女たちの何と清々しいこと! 映画もいいよ〜。(1月)

■『重力ピエロ』伊坂幸太郎(新潮社)注文

 まさしく題名通り、重いんだけれど、朗らか。この小説を通して「最強の家族」である彼ら四人と出会えたことが、一番の喜びだ。
 無謀を承知で云っちゃうけど、これ高校生の課題図書にして、皆にディスカッションさせたいなあ。レイプも放火も殺しもストーカーも家族も物語の結末も全〜部ひっくるめて、それらについて自分の考えを形にしてみる。相手の意見を聞いてみる。もちろん正解なんてなくて当然、いろんな考え方があることを知るのもいい体験になると思うのよね。(2月)

■『少女には向かない職業』桜庭一樹(東京創元社 ミステリ・フロンティア)注文

 不安定で浮き沈みが激しくて、そんな中学生の心情がうまく描かれていたと思った。島の、夏と冬の情景描写も印象的。ワゴン車の中のシーンが好きだな。(11月)

■『女王様と私』歌野晶午(角川書店)注文

 帯に「問題作」とあるけど、どこら辺が? 至ってフツーの小説に思えたぞ、私は。本文以外にも仕掛けがあるところはニクいね。装幀が、イラストといい帯とのバランスといい素晴らしい(でもこの女性、誰よ?)、欲をいえば光沢のある紙質の方が良かったかな。(11月)

■『スイス時計の謎』有栖川有栖(講談社ノベルス)注文

 有栖川さんの書く倒叙物は結構好き(「シャイロックの密室」)。話題の表題作は、本文中にもあるように『ローマ帽子の謎』を彷佛とさせた。時計一つでよくぞここまでのロジックの冴え。(4月)

■『スライハンド』我孫子武丸×藤谷陽子(ブレイドコミックス)注文

 うわあ、これは我孫子さんの小説でぜひぜひ読みたいっ。(9月)

■『センセイの鞄』川上弘美(文春文庫)注文

 この人の書くものは、品があっていいなあ。最後の二章の展開にびっくり。ドラマもぜひ観てみたいぞ。(6月)

■『そこへ届くのは僕たちの声』小路幸也(新潮社)注文

 植物状態の人の声が聞こえる奇跡、中途半端な誘拐未遂事件。「ハヤブサ」というキーワードをきっかけに、それらの事件と点在する幾人もの人たちがつながってゆく中盤が面白かった。大人と子どもの信頼関係も心地良いし。これでもう少し文章が達者だったらなあ。(3月)

■『タイム・リープ あしたはきのう(上・下)』高畑京一郎(電撃文庫)注文・上)(注文・下

 面白かった〜(^^)。「本格ミステリ・クロニクル300」にも入っている本作だが、本格そのものというより、本格好きな人の喜ぶ要素がたくさんあるって感じかな。パズルのピースがぴたぴた嵌っていくにつれ次第に見えてくる大きな謎、それに立ち向かう主人公たち。再読するとなお楽しめるぞ。(10月)

■『黄昏ホテル』e-NOVELS編(小学館)注文

 作家20人によるオムニバス企画。特に印象に残ったのは「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」「神輿と黄金のパイン」「タイヤキ」「セイムタイム・ネクストイヤー」「悪い客」。オチのある話、笑えて心暖まる話が好みかな。ところでどうして発表時と掲載順を変えちゃったんだろう。
 e-NOVELSの『黄昏ホテル』特集も併せて読むと面白い。購入ページには各作家の一言コメントもあるし。森山由海(=藤原ヨウコウ)さんの表紙画はPC上の方が発色が良くて断然綺麗。(10月)

■『誰のための綾織』飛鳥部勝則(原書房)注文

 題名が上手いなあ。物語のトーンがシリアスだったり えげつなかったりホラーだったりコミカルだったり‥と定まらないのが気になった(高校生の習作という設定だからしょうがないか。ホラー調の部分が一番好き)が、仕掛けには まんまとハマった。が、ミステリとして好みの部分がいっぱいあるのに、それだけで済まされないのがああもったいない。三原順の名前を一言も出さないでこんなに引用してしまっては、盗作のそしりをまぬかれないだろう。漫画をなめるな。(10月)

■『ちーちゃんは悠久の向こう』日日日(新風舎文庫)注文

 新人賞5冠(すごいよな)、噂の高校生作家の作品。久美沙織さんの解説はものすごく気合い入ってるけど、わりと軽〜い気持ちで読み始めたら内容けっこうハードでびっくり、そしてこのラストは好きだなあ。ちなみに、滅・こぉるさんの解釈はユニークだが、それが見破れないほど主人公はばかではないと思った(根拠はないけど)。(4月)

■『着信アリ』秋元康(角川ホラー文庫)注文

 長女さんに薦められて読み始めたものの、小説の体をなさぬレポートのような文章に最初は「うっ」となった。が、物語は結構面白いし、怖い。そこそこ辻褄が合っているし、後半は思わぬ展開もあるし。題名のセンスはすごくいいなあ、シンプルだけど印象的。(11月)

■『着信アリ2』秋元康(角川ホラー文庫)注文

『着信アリ』の結末ネタバレから始まるので読む順番には注意。内容は‥ううむ、行き当たりばったりな展開だなあ。怖いシーンはちゃんと怖いので、もったいない気が。(12月)

■『月読』太田忠司(文藝春秋)注文

「月読」「月導」この設定がとにもかくにも素晴しい!(ほれぼれ)。終盤は本格ミステリ・マスターズらしく「おおっ、そう来たか」と身を乗り出す場面も。でも一番心に残ったのは克己の炯子、二人のシーンかな。大胆で無謀、まっすぐで痛々しい、なぜだか私の大好きな『僕の殺人』を彷佛とさせた。太田さんにはぜひぜひジュブナイルを書いていただきたいっ。(6月)

■『月の扉』石持浅海(カッパ・ノベルス)注文

 これは面白い。乗客250人は存在しないかのごとく、のどかに(?)推理合戦を繰り広げるハイジャック犯とにわか探偵、とか、警察は存在しないかのごとく推理を披露する探偵とそれに聞き入るハイジャック犯、とかの違和感を乗り越えれば、随所に「上手いっ、そう来るか!」とゾクゾクさせられるプロット満載。一見素っ気無い表紙も、読了後はぐっと意味を持って見えてくるのがまたイイ感じ。(1月)

■『銅版画 江戸川乱歩の世界』多賀新/志村有弘(春陽堂)注文

 春陽文庫の江戸川乱歩文庫30冊の表紙絵。グロテスクで精密で、いい絵だなあ。解説は、絵の解説ではなく乱歩の小説の解説なので、未読の私はネタバレが怖くて読めないのが残念(笑)、まあ、読むのは老後の楽しみということで。(3月)

■『都市伝説セピア』朱川湊人(文藝春秋)注文

 なめらかな語り口のなんと心地よいこと。「死者恋」の迫力、「フクロウ男」のネーミングセンスもいいなあ。「昨日公園」「月の石」の、めちゃめちゃ切ないながらも心に一点灯のともるような展開は特にマル。「月の石」はぜひ、私と同年代の方々に読んでいただきたい。(1月)

■『図書室の海』恩田陸(新潮文庫)注文

 私は恩田さんのホラーが大好きなので、「茶色の小壜」「国境の南」や「図書室の海」の一場面が特に心に残った。自身の長篇の予告という位置付けの短篇って、他にも例があるのかな?たいそう新鮮に感じたが。それにしても、引き出しの多い作家さんだなあ。(8月)

■『となり町戦争』三崎亜記(集英社)注文

 印象を一言でいうと「さらさらさら」、でも水のさらさらではなく砂のさらさら、肌にザラつきが残る感じか。戦争を事業として扱う感覚は、以前別な本で体感したことがあったので、目新しさは感じなかったが、お役所仕事の細かい描写や時折挟み込まれる書類が奇妙にリアル。終章における主任の扱いは、ちょっと納得いかなかったな。
 一番不気味だったのは、戦争相手の固有名詞が最後まで出てこなかったこと。「となり」って名前の町なのか?(いや違うと思うぞ)(6月)

■『扉は閉ざされたまま』石持浅海(祥伝社NON NOVEL)注文

 うおおお(感動の雄叫び)。登場人物二人の息詰まる応酬が読みごたえあり。動機に絡んだ「ある物」が物語全般を通して浮きまくっているのが難だけど、最後の最後まで緊張感が途切れなかったのはお見事(ストーリーの先がうっかり目に入らぬよう、手で左ページを隠して右ページを読み‥という小説は久しぶり)。ラストも私としては全然オッケーだな。(8月)

■『中原中也 花と言葉の詩画集1』(ポプラ社)注文

 若林佳子さんの押花絵はとてもカラフルで綺麗、でも押花ってよく考えると花の屍なんだなあ。「北の海」や「サーカス」は収められているが、肝心の「昏睡」がないのが大変残念(何のことだか分からない方はぜひ『暗黒館の殺人』をお読み下さい)。(3月)

■『ななつのこものがたり』加納朋子・菊池健(東京創元社)注文

 加納さんのデビュー作『ななつのこ』(創元推理文庫)に出てきた本を実際に作っちゃった‥のだとばかり思っていたのたが、微妙に違った。駒子ちゃんファンにはたまらない一冊かと。P62,63の絵は特に、感慨深かったなあ。(11月)

■『博士の愛した数式』小川洋子(新潮社)注文

 読み始めたら止まらなくなり、気がついたら泣いていた。謙虚さと思いやりに溢れた、これは常に手元に置いておきたい一冊。さすが、2004年本屋大賞受賞作。(2月)

■『バカ日本地図』一刀(技術評論社)注文

 以前からその存在は知っていて(サイトはこちら)、基本的に「WEB上でタダで読めるものに、わざわざお金は払わんよ」な私なのだが、本屋で立ち読みしたらあまりに面白くてつい買ってしまった。外伝はよう分からんし、第二部の個人で書いたものはネタっぽいし、でも第一部の特に前半が秀逸。後半多少失速しながらもとにかく一つの形にまとめあげた管理人さんがエライ!(12月)

■『白蛇教異端審問』桐野夏生(文藝春秋)注文

 赤裸々だけど責任感のある物言いがいい。「女は〜、男は〜」という書き方は好きではないが、それを差っ引いても充分面白かった。今度は桐野さんの小説も読んでみよう。(4月)

■『箱少年』七戸優(パロル舎)注文

 ちょっとレトロな少年の絵と短い文章がいい感じ。谷山浩子ファンにはけっこうツボかも。(3月)

■『パズラー』西澤保彦(集英社)注文

 レベル高っ!まさしく“論理のアクロバット”、心ゆくまで堪能した。悪意に満ちた登場人物たちも、私はけっこう好き。さらに特筆すべきは、文章の技巧の高さ。「贋作「退職刑事」」はもちろんのこと、文章も人物造形も海外ものの翻訳としか思えない「卵が割れた後で」に感心しきり。いやこれは「技」というより「愛の深さ」だなきっと。大好きな作品を自らの血となり肉となるまで精読する著者の姿が見えるようだ。(6月)

■『パズルゲーム☆はいすくーる(11)』野間美由紀(白泉社文庫)注文

 今回は何といっても「ときバスツアー」が痛快。オールキャスト勢揃いだし、コン・ゲームものの白眉と云ってもいいだろう。(5月)

■『バッテリー(1)(2)(3)』あさのあつこ(角川文庫)注文(1)(2)(3))

 視点がクルクル替わるのになかなか馴染めないのだけれど、子どもも大人も区別なくひとりの人間として描いているのは好感触。早く(4)(5)(6)が文庫で出ないかな。(8月)

■『花まんま』朱川湊人(文藝春秋)注文

 涙がせり上がってくるもの、じっとりと重いもの、短篇それぞれに異なるカラーがあるものの、共通してどこかしら懐かしさを感じさせるのがこの著者の特長。お気に入りは「トカビの夜」「摩訶不思議」。朱川さんの紡ぎ出す日本語はとてもまろやかで美しいので、直木賞選評ではそのあたりにも触れられていると嬉しいな。(7月)

■『晴れた日は図書館へいこう』緑川聖司(小峰書店)注文

 読書っていいな、図書館ってステキなところだなと思わせてくれる作品。司書の美弥子さんの子どもへの接し方がとても上手で、親の立場の私が読んでも学ぶところが大きかった。(7月)

■『半熟探偵団(1〜3)』我孫子武丸×河内実加(秋田書店)

 探偵養成学校という設定は、ちと「何だかなあ」って思わなくもないけど、まあいっか。話がデカくなっちゃう後半よりは、小ネタの多い前半が好き。伊勢崎クンの意外なボケっぷりが気に入った(笑)。(11月)

■『パンプルムース!』江國香織/いわさきちひろ(講談社)注文

 新聞広告を見てひとめぼれ、速攻購入。ちひろさんの絵に江國さんのひらがなの詩が。見た目はやわらかだけど中身は相当に鋭い、これはいい!(3月)

■『百器徒然袋 風』京極夏彦(講談社ノベルス)注文

 私のイメージはこんな感じ>大きな箱に入れられ、どこかに運ばれて行く私(=読者)。ふたを閉められ真っ暗、外の話声はおぼろげながら聞こえて来るが、断片的でよく分からない。いったいどうなることかと不安とイライラが頂点に達したころ、突然箱のふたが開き、まばゆい光が!うわ、まぶしいっ‥目が慣れてくると、周囲の様子が一望でき「ああなるほど、こういうことだったのか!」大いに納得、スッキリ。というわけで、読後感は非常にいいんだけど、箱の中に入れられている時間が、長過ぎ。もちょっと短くまとめて欲しかった。(9月)

■『フォア・フォーズの素数』竹本健治(角川文庫)注文

 うわあ、綾辻さんの「文章」がお好きな方に、これはおススメかも。私は、一人称が「ボク」の作品がとってもとっても好き。(12月)

■『4TEEN』石田衣良(新潮社)注文

 現代に生きる14歳の少年たちの日常、友情、冒険、不安、性と愛、生と死、めいっぱい詰まった短篇集。うちの長男くん(もうすぐ中2)やその友人たちと比べると、彼らはあまりにカッコ良くて、いいとこどりの気がしないでもないが(笑)、高層ビルのさらに上に広がる青空のように清々しい読後感。八篇の中からあえてお気に入りを選ぶとすれば「空色の自転車」かな。(2月)

■『不思議じゃない国のアリス』沙藤一樹(講談社)注文

 表題作と「銃器のアマリリ」が特に好き。前者はいきいきとした関西弁が、後者は圧倒的なバイオレンスの収束のさせ方が。(9月)

■『ぶたぶた』矢崎存美(徳間デュアル文庫)注文

 日常に溶け込んだ“ぶたぶた”の存在が実にユニーク。「初恋」のインパクト、「銀色のプール」の心地よさ、心に残るシーンは数々あれど、最終章の「桜色を探しに」には脱帽。そうかこういうお話だったのかー。(12月)

■『古道具 中野商店』川上弘美(新潮社)注文

 物の話かと思ったら、人の話ばっかりだった。私の頭の中では、ヒトミさんはモデルの はな のイメージ。(9月)

■『ほうかご探偵隊』倉知淳(講談社ミステリーランド)注文

 うわははは、面白いっ! なんで解決編がこんなに長いのかと思ったら‥本の構成がツボにはまりまくり。もしやと思った箇所がことごとく伏線となって後から効いてくるのも、さすがだなあ。なんか似てるよなあと思ったら、お馴染みの「あの人」も意外な形で登場(^^)。(5月)

■『本格ミステリ05』本格ミステリ作家クラブ編(講談社ノベルス)注文

 特に印象深かったのは、以下の五篇。
「黄昏時に鬼たちは」山口雅也  ミスリードにまんまと嵌った。私の好きなタイプの本格。
「雲の南」柳広司   短いところが美しい。
「二つの鍵」三雲岳斗  一分の隙もない論理の展開、伏線の妙味。久々にもんどりうって感動。
「光る棺の中の白骨」柄刀一  不可思議な謎に心踊る。着地も見事。
「敬虔過ぎた狂信者」鳥飼否宇  おバカな雰囲気が、好きだなあ。 (7月)

■『毎日かあさん(2)お入学編』西原理恵子(毎日新聞社)注文

 名著ふたたび。笑って泣いて、この本読んでる間は忙しいったらありゃしない。自分も男の子と女の子の母親なので余計にツボにはまりまくり。(4月)

■『前田建設ファンタジー営業部』前田建設工業株式会社(幻冬舎)注文

 ウェブ企画を本にしたもので、HPで全部読めるし写真もあちらはカラーだし、でもすっごく面白くてうちの子どもにも読んでもらいたいなと思ったので、本も買っちゃった。知らなかったことを知る楽しみ(^^)。マジンガーZは名前は知ってるけど実は見たことないので、映像を見てみたいなー、ビデオ屋さんにはないかな。(10月)

■『魔王城殺人事件』歌野晶午(講談社ミステリーランド)注文

 これは面白い!先だって行ったアンケートではさほど票が集まらなかったが、私は今まで読んだミステリーランドの中で(全作読んだわけではないが)一番ワクワクさせられたぞ。昨年のうつのみやこども賞で最後まで大賞候補に残ったのもナルホドとうなずける出来。結末の持っていき方も歌野さんらしいなあ。(11月)

■『まったき動物園』エドワード・ゴーリー(河出書房新社)注文

「まったき」の意味が分からなくて(笑)。原題は「The Utter Zoo」“完全な動物園”。ゴーリーらしい奇妙かつユーモラスなアルファベット本。短歌調の訳も最高。(3月)

■『間取り相談室』佐藤和歌子(ぴあ株式会社)注文

『間取りの手帖』第二弾は‥うわ微妙。巻末に「この物語はフィクションです」ってわざわざ注意書きがあるがために(前作はなかった)、「もしかして、間取り図も創作なの?」って考えがちらと頭をよぎったが最後、魅力半減(物件そのものは、場所も値段もノンフィクションらしいのだが)。一番凝っているのはカバー裏かも(すべての人物に関連が‥いや、ひとりだけ仲間はずれがいるぞ)。(5月)

■『ミステリ十二か月』北村薫(中央公論新社)注文

 例えば私が本の感想を書いて「mihoroさんえらく感動してるなあ」というのは読み手に伝わっても、「自分も読んでみたいぞ」とまで思ってもらうことは難しい。その点、北村さんの本の紹介のしかたはさすが。大野隆司さんの挿絵はいろいろ仕掛けがあって凝ってるし、有栖川さんと北村さんの対談にいたっては、まるで漫才(笑)。ところどころ綾辻さんのお名前も出てきたりして、終始楽しい一冊だった。(1月)

■『水の迷宮』石持浅海(カッパ・ノベルス)注文

 奇妙な脅迫事件に端を発する魅力的な謎にわくわくし、その論理的な解明に心が震えた。警察を介入させない理由付けもよく考えられてる。ただ、映像がぼんやりとしか浮かんでこなかった(それは私の読解力に難があるのでは(笑))。文章にもうちょっとリズムというか色があったら、終章の説得力も増したと思うので、そこだけが残念。題名も普通過ぎるかなあ。あと、水族館の見取り図を付けてほしかった(それは完全に趣味の問題だって(笑))。(4月)

■『道』光原百合(女子パウロ会)注文

 黒井健さんの絵に惹かれて手に取ったら、作者が光原百合さんだったのでびっくり。素直な、いい詩だ。(2月)

■『弥勒の掌』我孫子武丸(文藝春秋)注文

 いやもう、自己中心的な二人の中年男が癇にさわるったらありゃしない(笑)、なので最終章は「えーっ!」と驚きつつも、すっきり。教団の描き方も我孫子さんらしいなあ。(5月)

■『名探偵 木更津悠也』麻耶雄嵩(カッパ・ノベルス)注文

 4つの短篇の中では「禁区」がお気に入り。文章が不親切で、込み入った物語を理解するのに少々骨が折れたが、ラストで意外な絵が浮んできて、わーそういうお話なら好きだぞ私(誤読かもしれないが)。白幽霊が効いている。北見隆さんの装幀はすごくいい。(6月)

■『メフィストの漫画』喜国雅彦+国樹由香(講談社)

 漫画の中にたくさん綾辻ネタがでてくるのが嬉しいぞっと。ところで「ミステリに至る病」でもカルタのネタがなかったっけ?私の記憶にかすかに残っているのは本に載っている「小説すばる」バージョンと微妙に違うんだけど‥誰か覚えていませんか。(8月)

■『モロッコ水晶の謎』有栖川有栖(講談社ノベルス)注文

 一番のお気に入りは掌編「推理合戦」。『ジュリエットの悲鳴』の時も思ったけど、有栖川さんのショートショートは上手いな。物語が短かければ短いほど、一文一文の担う役割が大きくなり、それだけ作家のセンスが問われると思うのだ。読者に推理させるタイプの話ではないにせよ、こういうの好きだなあ。(3月)

■『館島』東川篤哉(東京創元社ミステリフロンティア)注文

 すごい館だなあ(笑)。スラップスティックに少々品がないけれど、あれっと思った箇所が伏線としてきちんと回収されているところはマル。(9月)

■『やっぱり猫が好き』もたいまさこ・室井滋・小林聡美(幻冬舎)注文 

 もともとの脚本は三谷幸喜さんで、ビデオから台詞を起こした物をシナリオとして再構成したのも、三谷さん。なので「三谷幸喜著」と云ってもいいような気が。私の大好きな「はまぐりぺぺちゃん」「松茸が食べたい!」が収められているのは嬉しいな。改めて読むと、「留守電ルンルン」「パーティーは終わった」あたりは、ラストのオチにつながる伏線が物語中盤にしっかり仕掛けられているのが分かって面白い。「プップッピ〜」は、予想もつかない展開になるのがすごいなあ。ミステリファンにはお馴染みの「猿の手」なんてのもあるよ。(11月)

■『闇のなかの赤い馬』竹本健治(講談社ミステリーランド)注文

 血塗られた馬が猛り狂って向かってくるシーンがものすごく印象的。この恐怖の煽り方といい、作品全体に漂うそこはかとない透明感といい、綾辻さんの囁きシリーズを彷佛とさせる。やはり綾辻さんと竹本さん、共通する部分が多いんだなあ。短い物語の中できっちり伏線を回収して意外な真相を導きだしているのも良かった。(6月)

■『幽霊人命救助隊』高野和明(文藝春秋)注文

 うわあ、面白い! メガホンとか雪隠詰めとか、設定も良く出来てるんだわこれが。読んでいる間何度声を上げて笑ったことか。少々野暮ったさはあるものの、笑いあり、感動あり、現代社会の問題点(鬱病とか金融破綻とか)もしっかり盛り込み、お得な1冊。これぜひ、ドラマ化してほしいなあ。(2月)

■『容疑者Xの献身』東野圭吾(文藝春秋)注文

 一人の男が知力の限りを尽くして組み上げた精緻なトリックに驚愕し、論理の枠に収まりきれずに溢れ出す人間の感情に心を揺さぶられた。ちりばめられた多数のパズルのピースがひとつ残らず回収される様も見事。東野作品は胸にずっしり応えるなあ。(10月)

■『世にも美しい数学入門』藤原正彦/小川洋子(ちくまプリマー新書)注文

 キーワードは「美しい」。天才数学者たちのエピソードに笑い(そうかストーカーなのか(笑))、定理のシンプルな美しさに感動し。藤原さんの語り口はユーモアにあふれ、対する小川さんは謙虚で鋭い、絶妙のコンビネーション。数学嫌いのあなたもぜひ。(5月)

■『夜のピクニック』恩田陸(新潮社)注文

 本を開いている間ずっと、私も高校生になって彼らと一緒に歩いている気分にすっかりなっていた。希有な体験をありがとう。二日目、自由歩行になってからの部分はもっともっとページを使って、極限状態の身体とそれに反比例した気持ちの高揚とを書き込んでほしかったな。それにしても、この「歩行祭」を実際に行っていた恩田さんの母校に感謝。お陰でこんなに素敵な物語が生まれたのだから。(5月)

■『ラインの虜囚』田中芳樹(講談社ミステリーランド)注文

 これは楽しい冒険譚!でもどこがミステリ?と思いきや、最終章で意外な真相が。おお、なるほど〜。子どもの頃『鉄仮面』も『巌窟王(=モンテ・クリスト伯)』もわくわく読んだことを思い出した。(10月)

■『ラッシュライフ』伊坂幸太郎(新潮文庫)注文

 構成にやられた。うわあ、あれがああでこれがこうで、あれがズレていたのかなるほど(どういう感想だ(笑))。伊坂ワールドの倫理観は私のそれと微妙にズレていて、ま、それでも充分楽しめたが。(8月)

『リピート』乾くるみ(文藝春秋)注文

 リピートという現象に至るまでの準備段階が意外と長いんだけど、心理変化や行動が丁寧に描かれているので、自然に納得。後半のミッシングリンクの解決は、世界が反転する感覚が味わえて嬉しかった。ラスト「やっぱり〜」の一文が個人的にツボ。そうそう、アンタたち、端から見れば似た者同志なのよ。(2月)

■『臨場』横山秀夫(光文社)注文

 筆者が元新聞記者なだけあってリアリティー満点。「鉢植えの女」「餞」が特に心に残った。前者は反転する様が美しい。後者は宮部みゆきさんのある短篇を彷佛とさせる好篇。(2月)

■『ルート225』藤野千夜(新潮文庫)注文

 へえ、そういう終わりかたなんだとちょっとびっくり。大人向けの他の作品も今度読んでみようかな。(7月)

■『れんげ野原のまんなかで』森谷明子(東京創元社ミステリ・フロンティア)注文

 本を大切に思う気持ちが全編に満ちていて心地良かった。子どもからお年寄りに至るまで、幅広い年齢層の登場人物たちが的確に描かれている点にも感心した。ミステリの度合いの高い「立春──雛支度」がお気に入り。時折顔をのぞかせるユーモアも好きだなあ、「陸に上がったイルカ」まあなんとドンピシャな例えだこと(笑)。(11月)

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