mihoroの読書記録(2006年)

2006年に読んだ本の中で面白かったものをあげてみました。あらすじは敢えて書いてありません。本の裏表紙などに書かれているものを参考にして下さい。
ネタバレはしてませんのでご安心を。書名の五十音順に並んでいます。


■『I.TOON CAFE 伊藤有壱アニメーションの世界』(プチグラパブリッシング)注文

 ニャッキの作者は、ポン・デ・ライオンから平井堅の「キミはともだち」MVまで、いろーんな仕事を手掛けている才能豊かな方だったんだなあ。付録のDVDには、ニャッキ以外のありとあらゆる作品(CMやMVや)が収録されていて、見ごたえ満点。(3月)

■『青空の卵』坂木司(創元推理文庫)注文

 米澤穂信さんの作品がほろ苦いビターチョコだとしたら、こちらは甘々ミルクチョコか。謎を解決する糸口の見せ方とかひっくり返し方とかにセンスを感じた。それにしてもよく泣く主人公たちだなあ、自分の歪みにちゃんと気づいているから、嫌いではないけどね。(9月)

■『明日の記憶』荻原浩(光文社)注文

 なんと人の好い小説なんだろう(褒めてます)。若年性アルツハイマーを扱った重い内容のはずなのに、主人公も作者も、歩こうが足踏みしようが顔だけは常に前を向いている、そんな印象。映画のほうもお薦め。(6月)

■『安野光雅のいかれたカバン』安野光雅(世界文化社)注文

 突然出てきた、30年以上も前の自分の絵。本文中では、30年前の自分と今の自分とがこの絵を肴にのらりくらりと会話をしているが、彼らに代わって何の挿絵として描かれた絵なのか推理してみるのも一興かと。(7月)

■『いけちゃんとぼく』西原理恵子(角川書店)注文

 暖かい、包み込まれるようなマンガ。ラストは「へえ、そういう話だったのか」とちょっとびっくり。いけちゃんみたいなお母さんになれたら、いいなあ。(9月)

■『忌品』太田忠司(トクマノベルス)注文

 文章はイメージに頼らない冷静さがあるのに、ストーリーはどこか不条理、不安定。後半に行くに従ってその「腑に落ちな」さが魅力に思えてきた。色っぽいシーンもけっこう上手いんだなあ、太田さん。(9月)

■『押入れのちよ』荻原浩(新潮社)注文

 題名と装幀に惹かれた一冊。どこかしら必ずポジティブなのがこの著者の作風なのかな。胸に迫る暖かさあり、ゲラゲラ声出して笑っちゃうおかしさあり。「ちよ萌え」だー(笑)。(7月)

■『顔のない敵』石持浅海(カッパ・ノベルス)注文

 今後、地雷のニュースに接する度、この小説のことを思い出すことだろう。ミステリとしても読みごたえあり。罪人を法律で罰しないのは正直抵抗あるけど、その辺りも含めて考えさせられる小説だった。文章がとても読みやすくて取っ付きやすいのもマル。(10月)

■『夏期限定トロピカルパフェ事件』米澤穂信(創元推理文庫)注文

 途中から物語の色が変わるのは想定の範囲内。でもこういう終わり方になるとは!予想外だった。さあ、秋はどうなる??(4月)

■『風が強く吹いている』三浦しをん(新潮社)注文

 ほぼ素人集団がいきなり箱根駅伝を目指すというトンデモ設定なのだが、言葉を尽くして書かれているのでその興奮がつぶさに伝わってくる。本当に才能を持った人って美しいよね、惚れ惚れしちゃうの分かるなあ。表紙絵も面白くて好き〜(ネタバレではあるけれど(笑))。(11月)

■『仮面幻双曲』大山誠一郎(小学館)注文

 トリックには大いに感心、伏線の拾い方もきちんしてるし。欲をいえば、昭和20年代という時代を感じさせる描写や会話をもっと盛り込んでほしかったな。途中、読者の関心をトリック以外の部分にも向けさせることが出来ていれば、終盤のサプライズがより大きくなったのではないかと。正直、論理的にではないにしろ、犯人の予想がついてしまったので。(9月)

■『川に死体のある風景』(東京創元社)注文

『本格ミステリ06』では「おお、こんなところにも本格が!」的な、視野が広がる楽しみが味わえたが、このアンソロジーは本格度ずっと高し!本格ならではの醍醐味を堪能できた。トリックに感嘆したり、文章に翻弄されたり。この執筆陣なので当然といえば当然だが、ああ楽しかったー。(9月)

■『川の名前』川端裕人(ハヤカワ文庫)注文

 小学五年生の夏休みを一緒になって満喫して、楽しかったー! 少年たちの冒険はたしかに無謀で要領が悪く、だけど真剣で清々しいったら。キャラもそれぞれが魅力的でよかったなあ。一見何の変哲もない「川の名前」という題名の持つ意味にも感心。(10月)

■『気分は名探偵』我孫子武丸・有栖川有栖・霧舎巧・貫井徳郎・法月綸太郎・麻耶雄嵩(徳間書店)注文

 犯人当ては全敗だった(涙)が、とっても楽しめた。定期的にこういう企画本、出してほしいなあ。六編の中では「犯人当てという枠の中でこんなことを!」と驚かされた我孫子さんの作品が一番好き。(7月)

■『きまぐれロボット』星新一(角川文庫)注文

 新装版を思わず購入。380円って、最近の文庫にしては安いよね(レジでびっくりしてしまった)。
 シンプル・イズ・ベスト。教訓めいていても押し付けがましくなく、ああ私の身体の一部は確実に星さんのショートショートで出来ているのだなと再確認。片山若子さんの表紙絵もいいね。和田誠さんの挿絵も好きだけど、私の中ではやっぱり「星新一+真鍋博」コンビが不動だな。(2月)

■『九杯目には早すぎる』蒼井上鷹(フタバ ノベルス)注文

 たくらみはすごくいい、でも説明に文章を多く費やし過ぎている感じ。個人的には4篇のショートショートが俄然気に入った。著者にはぜひ、ミニミステリをライフワークにしていただきたい(稼ぎにはならなさそうだけど)。あと、巻き込まれ型のストーリーが上手いので、その線で思いっきりコミカルなのも読んでみたいかな。(10月)

■『空中庭園』角田光代(文藝春秋)注文

 ほわほわを予想してたら全然違って あけすけで、でも冷たくはない、ぽこぽこした感じのお話だった(なんじゃそりゃ)。所詮は他人、なのに家族、ひとつ屋根の下に暮らしていたって、気持ちなんかちっとも伝わらない。そういうもんだよね(基本が「分かりあえない」だから、努力や思いやりが必要なんだと思う)。表題作のラストは切なかった。映画も観てみようっと。(11月)

■『熊の場所』舞城王太郎(講談社文庫)注文

 初マイジョー。切れ目ない言葉の奔流、過激なストーリー、でも物語の芯には生命力に満ちあふれた何かがあって、一度読んだら二度と忘れない直球メッセージが魅力かな。一言ひとこと神経を遣って紡いだ美しい日本語を絹織物に例えるなら、舞城さんのそれは「羊 丸ごと一頭」といった迫力(どんな小説や)なんだけど、でも早速他の舞城作品も読む気にさせられてるから、やっぱすごいかも。

■『クリスマス・プレゼント』J・ディーヴァー(文春文庫)注文

 なるほど、被害者がくるりと加害者に、その逆も然り。どいつもこいつも裏がありそで面白かったなあ。表題作と「三角関係」「被包含犯罪」が特に印象に残った。(12月)

■『黒のトリビア』新潮社事件取材班(新潮文庫)注文

 現実の事件やら法律やらにはさほど興味もなく疎い私だが、この本は面白かった。脳内では中江真司さんのナレーションと「へぇ〜」が常に鳴り響いていた(笑)。一番印象に残っているのは「ガソリンと灯油の違い」。(7月)

■『交換殺人には向かない夜』東川篤哉(カッパノベルス)注文

 ぶわっはっは、だまされたー。独特のユーモアもドタバタも、だいぶ熟れてきて読みやすかった。伏線の使い方が上手いし、犯人の心情と行動にも充分納得させられたし(なるほどあれだけ重なれば)。でも、あの人は何でいちいち××××の?(笑)(3月)

■『コッペリア』加納朋子(講談社文庫)注文

 あくまで私の趣味で云うとだが、「ミステリ部分はなくてもいいや」と思ってしまったくらい、前半の人形を中心に据えた人間ドラマに心奪われた。ところで、蝋人形ならともかく、実在する人間にそっくりな球体関節人形っていうのは見たことないなあ。漫画にそっくり、というのならあるけど。(9月)

■『仔羊の巣』坂木司(東京創元文庫)注文

 市井の人々のちょっといい話は、宮部みゆきさんあたりのほうが遥かに上手いけど、謎と解決、その見せ方がわりと好き。キャラについては特に何も。(9月)

■『桜宵』北森鴻(講談社文庫)注文

 大好きな香菜里屋シリーズ第2弾。謎は解かれるためだけにあるのではない、その裏に横たわる人間の心理が読みごたえあり。大人のミステリだなあ。(6月)

■『三四郎はそれから門を出た』三浦しをん(ポプラ社)注文

「エッセイがとても面白い」と常々評判を聞いていて、それプラス題名と装幀に惹かれて手に取った一冊。なるほど、何度も声に出してガハハと笑っちゃったよ。平等な視点と、物事に対する素直さがいいなあ。(11月)

■『自殺うさぎの本』アンディ・ライリー(青山出版社)注文

 できることなら、作者にお目にかかってみたいぞ(笑)。殺っちゃん絵を描いてる私とすご〜く感性の近い方かと、勝手に親近感(^^)。ところでエピローグの意味が最初分からなかったのだが、長女さんが「皆既日食の続きだよ」と。なるほど!(1月)

■『死神の精度』伊坂幸太郎(文藝春秋)注文

 主人公の死神が淡々としているので、生死を扱っている物語なのにとてもあっさり。エスプリに富んだフレーズも思ったより少なめだった。ミステリ的には、各篇「おっ」と思わせる展開があるけど、やっぱりあっさり。胸にじんときた「死神と藤田」がお気に入り。(12月)

■『シャドウ』道尾秀介(東京創元社)注文

 痛くても最後まで読むべし。ちりばめられた物語の断片が、綺麗に拾い集められ閉じてゆく。上手いなあ。道尾さんの描く子どもが好き(悲惨なのが多いけどね)。(12月)

■『少女七竃と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹(角川書店)注文

 ナナカマドの樹のトリビアが一番心に残った(おいおい)。文章も物語も、もう少し練られているほうが好みだな。(9月)

■『STAR SALAD 星の玉子さま2』森博嗣(文藝春秋)注文

「1」に比べると衝撃度は低め、より広い読者層を想定したのかな。絵は完璧、線も色も上手すぎる。この本と出会えてホント良かった、でもこういう絵を描きたくても描けない自分が‥嬉しさ90%、悔しさ10%。(11月)

■『背の眼』道尾秀介(幻冬舎)注文

 著者と私、怖さのツボが似てるんじゃないかな、ホラーな部分の文章のリズムが絶妙で、とても楽しめた。読む前は地味に思えたタイトルが、今では怖いのなんのって。文章にただようそこはかとないユーモア、伏線を丁寧に回収する様もとっても好き。(11月)

■『セリヌンティウスの舟』石持浅海(カッパ・ノベルス)注文

 ミステリずれした者にとっては、「人を信じる」ことから始まるミステリというのが非常に新鮮で、新たな可能性に嬉しくなった。途中、あれ?と引っ掛かった箇所が、終盤綺麗に拾い集められ再構成されて行く様も見事。心情的には共感しにくい部分もあれど、これはこれでいいのかなあという気も。(1月)

■『魂萌え!』桐野夏生(毎日新聞社)注文

 萌え!というほど激しいお話ではなかったのが意外。若い世代には新鮮な題材かもしれないけれど、中年の私にとっては身近であるせいか「甘いなあ」と感じらた部分も。とはいえ500ページ近い分量を一気に読めちゃったよ。(10月)

■『チルドレン』伊坂幸太郎(講談社)注文

 犬も歩けば伏線に当たる、こういう話は大好きっす。一篇一篇に「あっ、そうだったのか!」って趣向が必ずあったのも良かったな。伊坂作品って、犯罪を軽々しくスタイリッシュに描いてるような気がして乗れないこともあったんだけど、外国人や障害者など偏見にさらされがちな人々に対するものすごーくフラットな視点は、素晴らしいなあ。(3月)

■『DEATH NOTE(1〜12)』大場つぐみ/小畑健(集英社)注文

 既に語り尽くされていることとは思うが、月とLとの緊迫した頭脳戦がたいそう読みごたえあり。ノートを故意に捨ててしまうくだりはびっくりした。絵も、もともと上手いのが、巻を重ねていくにつれ、さらに上達していくのがすごい。
 映画は、月とLとの対決一本に絞って物語を構成し直していて、Lファンの私は嬉しかった。(12月)

■『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』西尾維新(集英社)注文

 なんとまあ、見事に足もとをすくわれた。まるでカポエラ。原作を読むか、映画を観るかしないと楽しめない小説ではあるが、これ「本ミス」30位以内に入ってないの?何で?? 密室の理由とか、ミステリとしてすごく感心させられたけどなあ。(12月)

■『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー(扶桑社)注文

 小説というより自叙伝?ノンフィクション? でも、タレント本だからサラッと読めちゃうかなと、なめてかかったらとんでもなかった。子どもの立場、母親の立場、両方分かる自分はいっぱい考えさせられたなあ。100%「オカンへの感謝の気持ち」で書かれた本だからこその本屋大賞、なるほど納得。(7月)

■『独白するユニバーサル横メルカトル』平山夢明(光文社)注文

 コンクリートの殺風景な部屋、血しぶきに染まる壁、足下に散乱する血まみれの肉片、でも窓越しにほおを撫でていった一陣の風は、森林の奥、静かに水をたたえる湖を渡ってきた風のように清々しく爽やかだった‥って、文章ど下手ですみませんが(汗)、私の読後感はそんなふう。表題作と「Ωの聖餐」「無垢の祈り」が特に好き。
 平山さんは日本語を操る業師だ。「Ωの聖餐」なんて、凡庸な作家に書かせたらぐちゃぐちゃだのぬらぬらだの、安易なオノマトペの羅列に終わるだろうところを、的確な表現で情景を読者の脳内に完璧に再現するその才能たるや凄いと思った。「托卵」で平山さんの文章に惚れて以来、小説本の上梓を心待ちにしていたのだが、期待通りでとても嬉しい。余談だが、「推理作家協会賞受賞」の表題作はあまりミステリとは思えなかったなあ(あれ?)。(10月)

■『七つの黒い夢』(新潮文庫)注文

 どうしてこういう設定を思いつくんだろうの乙一さん、視覚と聴覚に訴えかけてくる恩田さんのホラー、意外にミステリしていた桜坂さんの作品が特に印象に残った。(3月)

■『虹の獄、桜の獄』竹本健治/建石修志(河出書房新社)注文

 これは竹本さんが私のために書いてくれたお話、というのはもちろん冗談だが、そのくらい文章といい世界観といい、もう大好きすぎてどうしようもない。(2月)

■『人形月』恋月姫(小学館)注文

 自分の買ったのはフィギュア付きの特装版。本物のお人形は高くて一生買えないだろうから、手が届く範囲のフィギュアを思いきって入手。さあ、お洋服を作ってやらなくちゃ。着物もいいなあ。『人形姫』『震える目蓋』と並べてみると、人形たちの進化していく様がよく分かる。ミルクカップに薔薇の花びらを一片浮かべたような、白い肌の美しいことといったら。(7月)

■『猫田一金五郎の冒険』とり・みき(講談社)注文

 脱力〜でも面白い〜。何なのこのコストパフォーマンスの悪い、紙の分厚い本は(おい)と最初思ったんだけど、なるほど終わりの歌留多に合わせたのね。その歌留多、四十七文字揃ってないし(おまけに祖父江さんの謝罪文だし)。ここまで造本に凝ったのに、カバー裏が真っ白なのはもったいない(笑)。京極さんは、絵、上手すぎ。(11月)

■『猫丸先輩の空論』倉知淳(講談社ノベルス)注文

 最初から「空論」と分かってはいるんだけどこんなこと実際するかなあ、と腑に落ちない短篇もあるにはあったが、楽しい語り口は健在。「水のそとの何か」の着地の仕方と「とむらい自動車」の謎が好きだな。そしてラストの書き下ろし「夜の猫丸」が出色。(1月)

■『配達あかずきん』大崎梢(東京創元社)注文

 そもそもの謎がちょっと無理矢理では?と気になる短篇もあったけど、書店の仕事がいろいろ分かるのが楽しかった。謎解きとサスペンス両方味わえる表題作が秀逸。装幀も無駄(?)に凝っていて、いいなこういうの。(10月)

■『化けものつづら』荒井良(木耳社)注文

 京極さんの文庫の表紙を飾る張り子人形の写真集。実物(一度見たことがある)にはかなわないけれど、写真で人形をいろんな方向から見られたのは嬉しかったな。木型に紙を貼って作ると書いてあるけど、髪や指などの細かい部分はどうやって?機会があったら個展にも行ってみたい。塗仏が好き〜(笑)。(8月)

■『パズルゲーム☆はいすくーる』野間美由紀(白泉社文庫)→ こちらにまとめページを

■『犯行現場の作り方』安井俊夫(メディアファクトリー)注文

 ミステリの舞台となった数々の館を紙上で再現。途方もない工事費用や建築基準法にそぐわない箇所など、矛盾点を指摘しつつも、あげ足取りになっていないところが素敵。原作への愛と敬意にあふれているので、大変心地よく読めた。続編もありそうなので、期待。(12月)

■『ピタゴラ装置DVDブック(1)』(小学館)注文

 豊かな発想、たゆまぬ努力。DVD収録時間は19分だが、2,940円払った価値はあり。私もスタッフの一員になってみたいなあ。(12月)

■『向日葵の咲かない夏』道尾秀介(新潮社)注文

 うーむ、惜しいっ。二転三転する展開には説得力があったし、読み返してみるとたしかにフェアに書いてあるし(このプロローグとエピローグはいいなあ)。でも、本筋の部分で「あっち立てればこっちが立たず」な印象が拭えず、すっきり納得できなかったのよね。描写の端々に作者独特の色合いが感じられて、それはすごく好みだったな。(3月)

■『文学賞メッタ斬り!リターンズ』大森望・豊崎由美(PARCO出版)注文

 二冊目はパワーダウンするかと思いきや、分量も多いし内容も濃い。腹黒(というか冷静)な大森さんと、駄々こね(でも豊富な読書量に裏打ちされた)豊崎さんのコンビに島田雅彦さんまで加わり、文学賞の裏事情がさらによく分かった。絲山秋子さん、角田光代さん、ROUND5に出てきた短篇集あたりは読んでみたいな。(8月)

■ 『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男(文藝春秋)注文

 この小説は「骨」だ。いくらでも話を膨らませられるだろうに、皮も肉もばっさり捨てて骨だけ。その潔さがいいし、最低限の言葉だけで伝えられるのは、やはり才能なんだろうなあ。(6月)

■『ボトルネック』米澤穂信(新潮社)注文

 キーワードは「想像して」。自分は最低だ、最低の状況にあると思っているそこのあなた、想像力を働かせて視点を変えてごらん──そう云ってくれてる小説だと思いました。私はラストを(以下ネタバレ、反転して後ろから読んでね 。もかのるえ思くしま羨けだるいはてっとに人いない、もで親母の低最 ネタバレ終わり)と読んだので。(10月)

■『本格ミステリ06』本格ミステリ作家クラブ編(講談社ノベルス)注文

 日頃あまりチェックしていなかった作家さんの作品が読めたのも、今回のアンソロジーの収穫。
 好きな作品は「流れ星のつくり方」と「シェイク・ハーフ」。本格ミステリという観点からは「太陽殿のイシス」が(物理トリック物はさほど好みではないにもかかわらず)高評価。「陰樹の森で」「霧ヶ峰涼の逆襲」の、短い物語の中で展開が二転三転するところもいい。「最後のメッセージ」は短さが美しい。(8月)

■『毎日かあさん(3)背脂編』西原理恵子(毎日新聞社)注文

 Web上でも読んでいるので半分は知ってる作品だったけど、何度読んでも楽しいし、元気が出る。ひよちゃん(娘さん)の話をもっと読みたいなあ。(6月)

■『魔女の死んだ家』篠田真由美(講談社ミステリーランド)注文

 人物は予想がついたけど、トリックはなかなか意表をつくものだった(というか、まあなんてハッキリした伏線が!)。石造りの西洋館、咲きほこるしだれ桜、どことなく不安定な一人称の語り口などなど、道具立てが好き。(1月)

■『摩天楼の怪人』島田荘司(東京創元社)注文

 分厚い本なのにするする読める、リーダビリティー抜群。いったいどうやってという謎のオンパレードだが、自分はむしろ摩天楼の歴史や建築技術の話に感心(おい)。後半のアクションシーンは手に汗握った。ひええ、こういう場所(<未読の方の興味を削がぬよう、こんな書き方で)は苦手ー、でも面白かったー。(2月)

■『まんねん貧乏』得能史子(ポプラ社)注文

 絵といい内容といい、まるで自分が描いてるみたい〜、と親近感がわいてつい買ってしまった。ちょっと余白多すぎ?(笑)、でもいいや、楽しかったから。暮らしのノウハウをもう少し読みたかったな。(11月)

■『昔の子どもたち』安野光雅(日本放送出版協会)注文

 安野さんの子ども時代が絵と文で細かく綴られているのだが、手書きの文章に味があって(漢字が旧字体)、「あんのくんの絵日記に先生がコメントを付けている」という設定になっているのが面白かったな。それにしても、なんと時代の変わったことか。(3月)

■『骸の爪』道尾秀介(幻冬舎)注文

 解決編にわくわく胸踊る本格ミステリ、久しぶりに読んだかも。スリット一本分ずらすと全く違う絵が表れる、縞々トリック絵のようだった。人物が活き活きと描かれているだけに、終盤の落差が悲しい余韻となって胸に刻まれる。題名も前作同様、ぱっと見で人を引き付けるインパクトはないけれど、読み終わると「なるほど〜」って思えるぞ。(11月)

■『メッセージ The First Card』注文
 『メッセージ The Last Card』マークース・ズーサック(ランダムハウス講談社)
注文

 装幀とあらすじに惹かれて思わず買った2冊。ちょっと不思議、でも可愛い物語。ラストは、へえそう来ましたか、でも作者のメッセージはしっかり伝わってきたぞ。ひとつひとつのエピソードに、ニコニコ。(4月)

■『ものいふ髑髏』夢枕獏(集英社文庫)注文

 本屋で見かけるたび、その題名とユーモラスな髑髏絵にずっと惹かれていた一冊。帯には「身の毛もよだつ‥」と書いてあるが、怖さより滑稽さや暖かさが心に残った。結末が意外だともっと楽しめたと思うけど、これはこれで良し。(2月)

■『模倣犯』宮部みゆき(新潮文庫)(注文 1 2 3 4 5

 登場人物たちの叫びがとにかく辛くてしんどくて、でも読むのを止められなくて。相変わらず宮部さんは少年や爺さんをカッコよく描くなあ。賢そうに見えて実は稚拙で杜撰な犯人、劇場型の犯罪‥読みながら私は、規模は違えど、ネット上での「荒らし」「祭り」と称される現象を連想した。他人を言葉で傷つけて悦に入る馬鹿、リンクを辿ってほいほい見に行く馬鹿、自分にもさもしい部分があるからこそ、物語が傷口に塗り付けられた塩のごとく染みるんだなあきっと。(3月)

■『幽霊城』サイモン・マースデン(河出書房新社)注文

 モノクロの赤外線写真は粒子が荒く、文章も建築に関する話は全くなし。いわば“格調高い心霊スポット巡り”、思いっきりオカルトなんだけど、妙に説得力あるんだよなこれが。幽閉、拷問、虐殺、忌わしい歴史に彩られ、何百年も同じ場所にたたずむ城館に、今なお住んでる人がいたりして。木と紙で家を作る日本とは異なる、ヨーロッパの石の家ならではの物語をひしひしと感じた。(3月)

■『夢十夜』夏目漱石/金井田英津子(パロル舎)注文

 明治の文豪を讃えるのも今さらだが、文章完璧、無駄なフレーズが一つもない(感動)。なので挿絵なんかなくてもいいわけだが、文庫にしたら二十数ページの物語をゆったり一冊の本として愉しむのも、これまた贅沢でいいものだ。金井田さんの版画も、不気味さと滑稽さが同居していて味わい深い。(3月)

■『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎(祥伝社文庫)注文

 4人のキャラがめちゃ立っていて、カッコ良かった〜。終盤の展開は先が読めなくてハラハラドキドキ。伏線の張り方や小道具の使い方も上手いなあ。映画も楽しみだ。(4月)

■『夜市』恒川光太郎(角川書店)注文

 ホラーな部分より、構築した異世界の設定の上手さに感心。物語の一ピースにすぎないと思い込んでいたものが、後半俄然意味を持ってくる、その展開が好きだ。(5月)

■『Return of the BUNNY SUICIDES』Andy Riley注文

 洋書がクリックひとつで簡単に買えちゃうんだから、Amazonさまさま(笑)。内容は、さすがに回を重ねてパターンが似てきちゃう難点はあれど、やっぱ面白い〜(^^)。私のお気に入りは「大根おろし」と「私がサラ・コナー」。これ、日本語版は出るのかな(後日出ました)。(4月)

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