mihoroの読書記録(2007年)

2007年に読んだ本の中で面白かったものをあげてみました。あらすじは敢えて書いてありません。本の裏表紙などに書かれているものを参考にして下さい。
ネタバレはしてませんのでご安心を。書名の五十音順に並んでいます。


■『姉飼』遠藤徹(角川文庫)注文

 単行本が出た頃に冒頭だけ読んで、当時はそのすさまじさに仰天したのだが、平山さんの『〜メルカトル』を読んだ今となっては、なんか普通に思えちゃう(笑)。まわりはどろどろでも芯は愛しかったり切なかったり。四篇の中では「ジャングル・ジム」がすっごく好き。(1月)

■『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹(東京創元社)注文

「昭和初期から平成まで、時代の移り変わりに絡めて語られる、旧家の女性三代記」ではあるんだけど、そんな言葉じゃこの小説の魅力は半分も伝わらないだろう。素っ頓狂でチャーミング。こんな物語読んだことない、ブラボー。ちなみに推理作家協会賞受賞作だけど、ミステリっぽくなるのはかなり後の方から。伏線は初っ端からしっかり張られているけどね。(6月)

■『雨の恐竜』山田正紀(理論社)注文

 あとがきに「私のなかには十四歳の少女が存在する」と書かれていて、ほんまかいなと斜に構えて読み始めたら、本当だった。著者にとって性別も年代も違う人物をこんなにリアルに描けるものなのかとびっくりした。主人公のいろんな気持ちを詰め込み過ぎてとっ散らかった感もあるけど、恐竜が悠々と横切っていくイメージがとにかく圧倒的で、心わしづかみ。(6月)

■『アルゼンチンババア』よしもとばなな(幻冬舎文庫)注文

 すごい題名だが(笑)、太陽のように暖かく、清らかな水のように心を洗ってくれる、そんな小説。ばななさんはやっぱりすごいなあ。
 ちなみに私が読んだのは単行本。ページの左側が英訳だったり、絵のページの紙質が違ったり、文章の一部の色を変えてたり‥とにかく凝った本で、正直読みずらかった(笑)。(2月)

■『インシテミル』米澤穂信(文藝春秋)注文

 寝不足やら暑さバテやら重なってた時期に読んだせいか、登場人物らの心理状態にすっかりシンクロしちゃって、「怖いよ勘弁してよここから出してー」状態に。数ページ読んでは本閉じてゼイゼイ‥って感じだったんだけど、非日常的な状況を茶化す×××××××が登場するあたりからはさくさく読めた。最後のオチと金銭的な部分がちょっと腑に落ちなかったけど、意外な展開には拍手喝采。(9月)

■『インストール』綿矢りさ(河出文庫)注文

 独特なリズムの文章がなかなか肌に馴染まなかったが、少年が出てくる辺りから面白くなってきた。適度にマトモで適度に意地悪な主人公もいい。でも、えーここで終わり?(7月)

■『失われた町』三崎亜記(集英社)注文

 まずはプロローグでめげないで、がんばって読み進めてね(笑)。最後まで読むと、冒頭の意味が鮮明に分かるから。得体の知れないものに対する恐怖を前面に出せばホラーに、町の消失から人々を守る戦いを詳細に書けばSFに、いずれにせよもっとドラマチックな物語に出来そうなものを、淡々と描くところがこの著者のカラーなんだなきっと。でも『となり町戦争』よりこちらの方がずっと好き。
 無機質な文章で、情景や音色を想像するのにちょっと骨が折れたが、町の消失する原理も法則も分からない、そして悲しむと消滅が増幅してしまうという設定が秀逸。分からない故に生じる差別や偏見もリアルに感じた。相変わらず、お役所仕事の描写は上手いな。(2月)

■ SFセレクション(1)『時空の旅』赤木かん子編(ポプラ社)注文

 わたくし的にはもう、星新一ばんざいなわけで。「午後の恐竜」シニカルかつファンタジック、意外な結末も楽しめて云うことなし。「大英博物館の盗賊」「トインビー・コンベクター」も、おっと思わせる展開があって良かったな。(1月)

■ SFセレクション(2)『ロボットvs.人間』赤木かん子編(ポプラ社)注文

 やっぱりアシモフはすごいなあ、星新一も手塚治虫もすごいなあ。切ない話の多い中、論文調の「未来世界の構築」は異質だったけど歯ごたえあり。ロボットものといえば清水玲子がいるのにーと思っていたら、解説でちゃんと言及、さすが赤木かん子さん。(1月)

■ SFセレクション(3)『宇宙の孤独』赤木かん子編(ポプラ社)注文

 作者の想像力は宇宙より広いかもと感心させられた「棺」。「ヴァーニスの剣士」は笑ったなあ、訳文も上手いね。(1月)

■ SFセレクション(4)『科学者たちの陰謀』赤木かん子編(ポプラ社)注文

「究極触媒」はちょっと本格ミステリっぽい味も(傍点あるしね)。「バックネットの青い影」うわあ、こう落としますか。(1月)

■ SFセレクション(5)『地球最後の日』赤木かん子編(ポプラ社)注文

 これはSFというよりは、起こりうるかもしれないホラーだね。すっごく面白かった、五篇ともずっしり心に残った。
「電話がなっている」は、一部で「トラウマ児童文学」として有名なんだそうだが、女の子があまりにいい子すぎるというか、都合良すぎる点がちょっと不満。でもラスト2ページの恐怖はただ事ではなかったぞ。編者による解説はネタバレなので先に読まないでね。(1月)

■ SFセレクション(6)『変身願望〜メタモルフォーゼ』赤木かん子編(ポプラ社)注文

「ぼくは、おんなのこ」このネタで長篇を読んでみたいな。「わが家のサッカーボール」は、ほのぼのなんだけど凄かった。菅浩江さんの『永遠の森』は今度読むぞ。(1月)

■ SFセレクション(7)『未来世界へようこそ』赤木かん子編(ポプラ社)注文

 読後感の良いもの揃い。未来世界というからには、もっと奇抜なのを読んでみたかった。(1月)

■『怪談集 花月夜綺譚』集英社文庫編集部編(集英社文庫)注文

 題名の「怪談」にふさわしく、どれも語り口が滑らかで読んでいて心地よかった。ほとんどが時代ものなのだが、恩田さんの作品だけがとっても妙。とてつもない。でも怖くて一番好きー。(10月)

■『カカオ80%の夏』永井するみ(理論社)注文

 おお、正統派ハードボイルド。人物の描写が実に的確。少女だけでなく、おばあさんのセリフも本当に聞こえてきそうな程リアルに描かれていた。(7月)

■『陰日向に咲く』劇団ひとり(幻冬舎)注文

 恩田陸の推薦文はダテじゃなかった。後半失速した感もあったが、登場人物が短篇をまたいで微妙につながってる構成はとても好き。著者は仕事柄、人間観察力には長けているんだろうから、描写力をアップさせればさらに化けるかも? 婆さんの手紙で不覚にも泣いてしまったよ。(4月)

■『片耳うさぎ』大崎梢(光文社)注文

 すごく面白かった。少女の成長物語としても、ミステリとしても。古いお屋敷の色や匂いがもっと感じられると、さらに良かったな。(10月)

■『片眼の猿』道尾秀介(新潮社)注文

 映像を思い浮かべながら小説を読む自分は、ええ思いっきりダマされましたとも。さり気ない伏線の仕込みとその回収の仕方が実に見事。寓意を含んだエピソード(片眼の猿とか鳩の話とか)は伊坂幸太郎ふうかな。ローズ・フラットの住人もそれなりにキャラが立ってて面白かった。(10月)

■『鴨川ホルモー』万城目学(産業編集センター)注文

 トンデモ世界にするりと読者を連れて行く作者の腕は中々のもの。新人さんなのに文章もつっかかるところがないし、これだけ楽しませてくれれば満足満足。欲を云えば、ホルモーを共に戦うメンバー10人のうち半数が「その他大勢」扱いなので、もうちょっと各々のキャラが見えても良かったかなあ(『風が強く吹いている』みたいに)。あと本文とは関係ないが、後半の展開をバラす表紙はちょっといただけないかと。(3月)

■『かもめ食堂』群ようこ(幻冬舎)注文

 映画の企画がまずあって、それから書き下ろした物語だそうで。さらっと読めるけど、情景描写がもっとあっても良かったんじゃないかと。前半が面白かったなあ、「オロロキマシタ」のあたり。(2月)

■『北村薫のミステリびっくり箱』北村薫(角川書店)注文

昔の探偵作家たちもいろんな企画に興じていたんだね。貴重な音源が聴けるのは乱歩が遺してくれたからこそ。そしてそれを我々が楽しめるのは、戸川さんや北村さんが居てくれたからこそ。感謝感謝の、実に楽しい一冊。(12月)

■『きつねのはなし』森見登美彦(新潮社)注文

 普通の言葉が素直に綴られているようでいて、どっこい並の人間には到底書けない文章だねこれ、上手いなあ。狐のお面、闇を跋扈する謎の獣、琵琶湖疎水、物語を彩る小道具もいい。ただ段落がやたらと短いので、読みやすいんだけどその都度現実に引き戻されるというか、むしろだーっと怒濤のごとく文章を連ねて、とんでもなく遠くまで連れていってほしかった気も。「果実の中の龍」が一番分かりやすかったかな。この本はいずれまたじっくりと再読したい。(1月)

■『狂骨の夢』京極夏彦(講談社文庫)注文

 暗い海に次々と髑髏が浮かび上がり、ゆらゆら海中を漂っている、そんな印象の物語、まさしく題名通り。見通しのきかない闇に光を当て、それらの素性をひとつ残らず解明する京極堂は圧巻。そこまでが長いといえば長いのだが、時おり出てくる榎木津が、澱んだ水をかん回してくれるお陰で退屈しない(笑)。これ、真相を知った上で再読したら、「なるほどこの事件がこういうことで」とすべて分かって気持ちいいだろうなあ。(3月)

■『今日の早川さん』COCO(早川書房)注文

 SFにも翻訳ものにも暗い自分だけど、本好きならではのネタで楽しめた。全ページカラーじゃなくていいから、もちょっと漫画をたくさん載せてほしかったな。余白多すぎ。(9月)

■『クワイエットルームへようこそ』松尾スズキ(文春文庫)注文

映画と同じく、テンポの良さが心地いい。とても深刻な話なんだけど、筆致はからっと明るい。もうちょっと暗いところがあると、さらに物語が立体的に浮かび上がるんじゃないかな。(11月)

■『月光ゲーム』有栖川有栖(創元推理文庫)注文

火山弾が降りそそぐ状況は派手だけど、解決編はカタルシスというよりは、しーんと静まり返る感じ。ああでも、まさしくこれぞ本格ミステリ。いいもの読んだ。(12月)

■『蹴りたい背中』綿矢りさ(河出文庫)注文

『インストール』の時は「ふーん」程度だったんだけど、うわ、これは参ったわ。強がってるけど淋しくて、正直だけど素直じゃなくて、周囲はよく観察してるくせに自分に関しては鈍感で。等身大の無器用な少女を五感を総動員して描いた傑作(私にとっては)。(7月)

■『幸福な食卓』瀬尾まいこ(講談社)注文

 複雑な状況にある家族なんだけど、主人公を取りまく人々が基本的にみんなとっても優しいので、それが嬉しくもありちょっと物足りなくもあり。合唱の練習シーンは心がひりひり痛んだが、でもそのせいで交流会の場面がもっとも心に残った。
 ちなみに映画は、かなり原作に忠実な映像化で好感が持てた。ただ説明不足のきらいがあるので、原作を読んでからの方が楽しめるかもしれない。(2月)

■『凍りのくじら』辻村深月(講談社ノベルス)注文

頭でっかちな主人公だなあ、とても真面目に書いているのは分かるけど長いよなあ、などと思いながらよいしょよいしょと読んでいたけど、お母さんが‥のあたりからページを繰る手が止まらなくなる。途中「?」だったことが終盤に氷解。綿密な伏線が一点に収束、というお話ではないけれど、おお、これは他の作品も読んでみよう。(11月)

■『この本読んだ?おぼえてる?2』あかぎかんこ(フェリシモ出版)注文

 新しい国語の教科書をもらうと、まずは端から端まで読む。特に物語はじっくり読む。そういう子どもだったので、あの頃のワクワク感がよみがえって来た感じ。昔読んだお話をもう一度っていう人、多いんだなあ(^^)。赤木さんの文章はたまーに暑っくるしい時もあって、また取り上げられていのが自分が昔読んだものより、自分の子どもの教科書で読んだものの方が多かったのはちょっと残念だったけど。(1月)

■『サイン会はいかが?』大崎梢(東京創元社)注文

 書店員さんやお客さん、それぞれのキャラがとてもよく描かれていて面白かった。手掛かりが伏線として予め提示されるともっと良かった。「君と語る永遠」「ヤギさんの忘れもの」は素直に感動。でもイチオシは表題作かな。「配達あかずきん」もそうだったけど、事件を未然に防ごうとするハラハラ感が好き。(7月)

■『紙魚家崩壊』北村薫(講談社)注文

なんとも味わい深い短篇集。最後の一篇が、エッセイですか?駄洒落ですか?と思ったら行き着くところはしっかり本格ミステリ。紙の上に文字を並べただけで、小説家はこんなこともあんなこともできてしまうのね、すごいなあ。(11月)

■『銃とチョコレート』乙一(講談社)注文

 祝・うつのみやこども賞! けっこうダークな部分もあるけど、いい人悪い人、そんな紋切り型の分け方が通用しないところが深いなあ。平仮名が多いせいか、初読の時は中盤間延びした印象を持ったけど、再読したらそうでもなかった、むしろより感動した。登場人物がチョコの名だと、カタカナでもすぐ頭に入って便利(笑)。(5月)

■『樹霊』鳥飼否宇(東京創元社)注文

 ううむ、キャラが薄いなあ‥って、なんせここ二ケ月ずーっと京極堂シリーズに浸っていたので、あれと比べちゃどんな小説のキャラも薄く見えるわな(笑)。まあこれは、個人的に読んだ時期が悪かったということで。もっと前半で「樹の霊」を感じさせてくれたら、実際の解決との落差が際立って良かったのにな。アイヌならではのある「行動」になるほどと感心。最後の動機も想像の斜め上を行くもので、ちょっとびっくり。(5月)

■『小生物語』乙一(幻冬舎文庫)注文

 日常も、乙一ボックスを通すとこんなに変容。Web連載時にも読んでいたので、ソファーの少年との再会が嬉しかった。(6月)

■『小説こちら葛飾区亀有公園前派出所』大沢在昌・石田衣良・今野敏・柴田よしき・京極夏彦・逢坂剛・東野圭吾(集英社)注文

 新宿鮫もIWGPも未読なので、著者の持ちキャラとの絡みを楽しめたのは京極作品だけだったんだけど‥なるほどだから中野なのね(にやり)。一番のお気に入りは「キング・タイガー」、これはいいっ(でも両さんはほとんど出てこない(笑))。(7月)

■『少年少女漂流記』古屋×乙一×兎丸(集英社)注文

 古屋さんの漫画は好きだけれど、この物語はぜひとも乙一さんの小説で読みたいっ。水没する学校とか蟻で作られた画像とか、文章でどう表現してくれるのか、楽しみなんだけどなあ。(2月)

■『書店繁盛記』田口久美子(ポプラ社)注文

 題名と内容が合っていない気も(だって景気の悪い話ばっかり)。それはともかく、誰を対象に書いているかがちょっと分かりにくい部分があった。出版業界の仕組みや用語は、一般読者向けに脚注が必要かも。でも、これは絶対読んでいる最中にでもリアル書店に行きたくなる本だ。普段興味のなかったジャンルの棚も覗いてみたくなった。(1月)

■『白戸修の事件簿』大倉崇裕(双葉文庫)注文

 白戸クンのキャラがいいね。巻き込まれるだけでなく、ちゃっかり事件を解決する話が特に好きだな。(1月)

■『新本格もどき』霧舎巧(カッパノベルス)注文

 新本格世代ど真ん中の自分にとって、こういう設定は面白くないわけがない(^^)。ただ、お話そのものは、一読しただけではすんなり頭に入ってこなかった。頭悪い読者ですみません。(9月)

■『捨て色』玉岡かおる(角川文庫)注文

 「色の名前」が好きな自分が、題名に惹かれて手に取った一冊。 人生や恋愛って勝ち負けだけじゃないと思うんだけどなあ。そんな中、お気に入りの一篇を選ぶとしたら「浅葱色の海を見ている」かな。「からくれなゐに」の落としどころも好き。文章は滑らかでとてもきれい。(10月)

■『青年のための読書クラブ』桜庭一樹(新潮社)注文

 あれえ、読書の話じゃないのか。章ごとに語り手も時代も変わるのに文体が同じなのがちょっと‥。でも、デフォルメの仕方は桜庭さんらしくて楽しかった。一見精緻なアール・ヌーヴォー風、でも良く見るとマンガチックな装幀は、内容をズバリ表していて見事。(8月)

■『1950年のバックトス』北村薫(新潮社)注文

 ホラーあり、駄洒落(笑)あり、心がじんわり温まる話あり、素晴らしい掌篇集。中には一読しただけではピンとこない話もあったけど、文章が巧みで、読んでいる間すごく充実した時間を過ごさせてもらったって感じ。私はぶっ飛んだ(笑)ホラーも好きだけど、「包丁」のように、ある一点で立ち止まる、その揺るぎなさもまたいいなあと思った。(10月)

■『タイムカプセル』折原一(理論社)注文

 謎解きそのものより、中盤までのホラーな趣向がかなりツボにはまって、わくわくさせられた。(7月)

■『ソロモンの犬』道尾秀介(文藝春秋)注文

空をぽーんと5mくらい飛びましたよ、やられたね。最初のほうの「ある一行」をもっと活かすストーリー、キャラにすれば最上級のミステリになっただろうに、そこが残念。でも、犬の習性を絡めた謎と展開には、がっちり引きつけられた。(11月)

■『ちゃれんじ?』東野圭吾(角川文庫)注文

 人は何かにハマると「こんなに面白いのにどうしてやらないの?」という押し付けがましい姿勢になりがちだが、東野さんは終始ストイック。なので、読み終わってもスノボのことはよく分からないままなんだけど(笑)、著者がすっごく楽しんでいることは充分伝わってきた。間に挟まれた短篇小説も、なかなかいい味。(7月)

■『鎮火報』日明恩(講談社ノベルス)注文

 長いよ。熱いよ。でも読む前と後で、消防車のサイレンの音が全く違って聞こえるようになった。力ある小説。(8月)

■『底辺女子高生』豊島ミホ(幻冬舎文庫)注文

 アウトローな高校生から「底辺お母さん」へと成長(?)した自分は、著者の「大丈夫だよ」というメッセージがとても嬉しかった。で、このエッセイを読んだ後は当然のように『檸檬のころ』が読みたくなり、ただいま再読中。(8月)

■『でかい月だな』水森サトリ(集英社)注文

 おお、これはけっこうツボ。主人公の心情がとても自然に描かれていて、自分の気持ちと重ね合わせながら読むことが出来た。中川くん、いい味出してるなあ。幻想的な描写がもう一息、あと眼帯少女が後半唐突すぎだと思ったけど、ミステリ者に嬉しい「おおっ」な部分もあるし、なかなか。(5月)

■『できるかなクアトロ』西原理恵子(扶桑社)注文

 どこまで行くんだサイバラ。ヒジュラとゴビ砂漠が特に良かった。こんなに地に足のついたルポはそうはお目にかかれない。(5月)

■『鉄鼠の檻』京極夏彦(講談社文庫)注文

 このまま自分は、箱根の山中で雪と僧侶にまみれて息絶えるかと思った(僧の呼び方が名字だったり下の名前だったりするので覚えられねえ(笑))。面白かった、けど長いなあ。これ以上はないってくらいレギュラー陣のキャラが立っているので、飽きないし読み易いんだけどね。でも禅の説明はよう分からん、故に最後のカタルシスも今一歩(すみません未熟な読者で)。(6月)

■『動物園の鳥』坂木司(創元推理文庫)注文

 子どもっぽいけど真摯な物語。登場人物の性格や過去などのキャラ設定が、謎の解決とすごく上手くリンクしている。これ、ミステリとしてもっと評価されていい作品だと思うけどなあ。(1月)

■『遠まわりする雛』米澤穂信(角川書店)注文

 読み終えると春が来る(^^)。謎解きとしてはあっさりめの短篇が多いが、「心あたりのある者は」「あきましておめでとう」は、うおおこれぞ本格!な気分を味わえた。(10月)

■『時を巡る肖像』柄刀一(実業之日本社)注文

 柄刀さんというと、空を飛ぶよな不可思議状況を力技で着地させる「トリックの人」というイメージがあったんだけど、うわあこれは新境地? その人物ならではの動機がどれも説得力あって、読みごたえがあった。「デューラーの瞳」が一番印象に残ったかな。(5月)

■『猫の建築家』森博嗣・佐久間真人(光文社文庫)注文

 なかなかに高尚な内容で、真剣に読みふける。これを読んだ後だと、我が家の寝てばっかりの駄猫も、いっぱしに哲学しているように見えますな(笑)。(1月)

■『パズルゲーム☆はいすくーる(15)』野間美由紀(白泉社文庫)注文

 ネタは早い時点で予想がつくものもあったが、ストーリー運び、特に締めくくり方が上手いので、安心して読める。鉄板だね。「嘘つきが多すぎる」がとりわけ好き。(6月)

■『パズルゲーム☆はいすくーる(16)』野間美由紀(白泉社文庫)注文

 この表紙、みいなちゃんかと思ったら美女なのか。現在のミステリ研メンバーが出てくる「頼もしい後輩」、美女の活躍する「些細な出来事」が特に印象に残った。美女&卓馬、この二人けっこう好きなんだよね(^^)。(7月)

■『パズルゲーム☆はいすくーる(17)』野間美由紀(白泉社文庫)注文

 安定した面白さ、でもミステリ的には先の展開の予想がつくレベル‥と思っていたら、「京都に消えた女」ですっかりヤラれた。(9月)

■『パズルゲーム☆はいすくーる(18)』野間美由紀(白泉社文庫)注文

 ついに白泉社文庫最終巻。やっぱり葉蔓高校を舞台にした話が、この漫画の原点なんだなあ。(9月)

■『非・バランス』魚住直子(講談社文庫)注文

 うわあ、これは私のために書かれた物語だ。気持ち、すごく分かるし、そうだよ大人になってもやっぱり大変なんだよね。
 これも映画化されてたのか‥と検索してみたら、小日向文世が女役やってたあれですか!えー、ずいぶん思いきった変更を。でもDVD借りて観てみようかな。(2月)

■『秘密(3)』清水玲子(白泉社)注文

 うわあ、チャッピー怖いー(><)。犯人の抱える「秘密」が心情的に分かりにくかったが、意外な展開もあるし、今回も読みごたえあり。短篇の「不思議な秘密」は「ぎゃー」と声を上げそうになった(^^)。ミステリ者の皆さん、このシリーズはお薦めでっせー。(3月)

■『百万のマルコ』柳広司(創元推理文庫)注文

 各篇お定まりの展開は、さながら「水戸黄門」のように(笑)安心して楽しめた。登場する国々の変わった風習や決まりごとが、謎を解く条件としてちゃんと機能しているところがいい。ミステリが主、物語が従の推理ゲームの趣、でもこういうの好きー。(7月)

■『ブラバン』津原泰水(バジリコ出版)注文

 いきなり30名を越す登場人物表(しかも担当楽器付き)が出てきて面喰らったが、気にすることはないよ。高校時代と25年後の現在とが何度も交錯する構成なのに、本文を読んでるだけで自然に、大勢の人物の昔と今ががくっきりと頭に描かれる。決して書き過ぎない、最低限の言葉でこれを成し遂げた津原さんの手腕たるや、いやはや畏れ入りました。一章の長さも絶妙だし、行間からたしかに音が聞こえてくる。ネイティブな広島弁も効果抜群。笑えて泣けて、ほんとにいい小説。本屋大賞の候補にならなかったのが、とても残念。(5月)

■『文学賞メッタ斬り!受賞作はありません編』大森望・豊崎由美(PARCO出版)注文

 同じことを三年もやってると、マンネリになったりテンション下がったりしてもおかしくないのに、この二人はそうした懸念とは一切無縁。いやー相変わらず飛ばしてくれるなあ、何度爆笑したことか。まあこれだけ笑えるのは、いかに一部の選考委員がヘタレかってことの裏返しなんだけどさ。「リターンズ」でおや?と思った箇所がちゃんと直ってた点も嬉しい(ROUND6の掲載順とか)。「容疑者X論争」にまで触れられていて(笠井さんがこういうことになっていたとは!)、ツモ爺特集もあって、今回も読みごたえありまっせ。それにしても大森さん、本の読みすぎでお身体壊しませんように。(5月)

■『包帯クラブ』天童荒太(ちくまプリマー新書)注文

 なんか、包帯みたいにユルい話だなあと思いながら読んでいたけど、でも「救いたい救われたい」という気持ちはよく分かるなあ。映画のキャスティングはかなりハマっている気がするので、観るのが楽しみ。(8月)

■『ぼくのメジャースプーン』辻村深月(講談社ノベルス)注文

罪とか罰とか、とても重くて深いテーマに真っ向から取り組んだ作者の真面目さは大いに買いたい。秋山先生とぼくの授業がもう少し論理的に整理されて書かれていたら、ラストの驚きがさらに増したと思う。この先生のキャラはとても良いね。(11月)

■『北極ライフ』谷山浩子/ナショナル ジオグラフィック(日経ナショナル ジオグラフィック社)注文

 映画「北極のナヌー」のフォトブック。帯の言葉「しろくまもラクじゃない。やさしい気持ちになれるフォトブック」というのは、正直見当外れもいいところ。写真は綺麗だけど内容はぐっさりきますよ。そんな中、浩子さんの言葉がとても力強く前向きで、素晴らしいや。(10月)

■『本格推理委員会』日向まさみち(角川文庫)注文

 取ってつけたようなドタバタ、必然性のないキャラ設定、これはちょっとつらいなあと最初は思ったが、どっこい後半はなかなか。本格推理と呼ぶには伏線が弱いけど、伯父さんの事件の真相あたりはけっこうツボだった。あと表紙もいいよね(多くは語るまい、読んだ人には分かるはず)。この作者、桜並木とか空模様とか情景描写の文章読むとけっこう上手いので、全体も無理にラノベっぽくしないほうが合うんじゃないかな。(2月)

■『毎日かあさん(4)出戻り編』西原理恵子(毎日新聞社)注文

 読むと子育ての原点に立ち返れる。だから、たくさんのありがとうをサイバラさんと、健気なお子さんたちと、そして天国の鴨ちゃんに。これからも、この家族にどうぞ幸多かれと祈らずにはいられない。(7月)

■『前田建設ファンタジー営業部neo』前田建設工業株式会社(幻冬舎)注文

「貴方のお庭から、アンドロメダへ」というコピーが秀逸(笑)。もちろんWeb上で読めるのだが、本の方が文章は読みやすい(でも参考資料のアニメ絵や写真は、Webのカラーの方が見やすいかも)。相変わらず楽しく、ケラケラ笑いながら「REED工法」とか「アクティブ・マス・ダンパー」について勉強できちゃう優れもの。HAMACON2のプレゼン、見たかったなあ。(8月)

■『間宮兄弟』江國香織(小学館)注文

 江國さんというと恋愛小説のイメージがあるが、本書の主人公は恋愛にちっとも縁のない男兄弟。なので、彼らのことを描いた部分はまっさらな白、彼らを取りまく女性たちの恋愛模様を描いた部分にぺたぺた色がついている、そんな印象。
 実は最初に観たのは映画の方。30過ぎた男兄弟が仲良く暮らしているという設定はキモいんだけど、それがだんだんカワいく思えてくるから不思議。私ぐらいの年になると、親の介護や遺産をめぐって兄弟すっかり仲たがいしちゃったなんて話をリアルに見聞きするんで、「兄弟仲良いのがなんでキモいんだろう、仲悪いよりずっといいじゃん。誰に迷惑かけてるわけでもなく、親を大切にし、きちんと社会人して毎日をエンジョイしている彼ら。けっこういいじゃん」と、目からウロコが落ちた気分。(2月)

■『ミサイルマン』平山夢明(光文社)注文

 血と汚物にまみれた手で、甘い甘いラブストーリーや、魂の洗われるような青春グラフィティーを紡ぎ出す。チクショウ、やっぱスゴイや平山夢明。「それでもおまえは俺のハニー」「ミサイルマン」が特に好き。(10月)

■『黙の部屋』折原一(文藝春秋)注文

 フィクション(と思われる)部分より、実在した黙に関するノンフィクション部分が圧倒的に面白かった。オークションの描写なんか、すごいリアル。いっそのこと主人公には、女なんぞにうつつを抜かさず、黙ひとすじに突っ走ってほしかった気も。それにしても、なにがなんでも実物の絵を見たくなりますなこれは。(6月)

■『悠悠おもちゃライフ』森博嗣(講談社文庫)注文

 文庫でここまで写真が綺麗だと、単行本を買う必要性がますますなくなるね。一番印象に残ったのは、子供の頃の森さんの話。なんというか、未完成の「森博嗣」が垣間見えて面白かったのだ。今の森さんは、思考も行動も揺るぎなくて、すっかり完成しちゃってる感じだからね(実際は違うのかもしれないけど)。(8月)

■『ゆれる』西川美和(ポプラ社)注文

 章ごとに語り手が替わる構成が秀逸。事件の真相については、映画を観た時自分が考えたストーリーはやっぱ違うのかなあという印象を持った。しかし、つくづくこの兄のキャラ設定は凄まじい。いずれまた映画もじっくり観直してみよう。(7月)

■『夢を与える』綿矢りさ(河出書房新社)注文

 キラリと光る文章は少なかった気がするが、それにしても十八歳少女をこんなとこに置き去りにしますか。著者の容赦なさ、好きだなあ。(7月)

■『レイクサイド』東野圭吾(文春文庫)注文

 おおっ、そういう真相だったのか、そういう動機だったのか。大人たちの行動には納得しがたい部分もあったけど、自分が同じ立場に立たされたら‥うーん、やっぱり訊きにくいかもなあ。(1月)

■『檸檬のころ』豊島ミホ(幻冬舎)注文

 わあこれは良かった。高校時代の色や、匂いや、ドキドキしたり、こっ恥ずかしかったり、そんなのが一気によみがえってきたよ。タイムマシンみたいな小説だなあ。それだけ描写が的確なのだろう。(3月)

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